公正な社会
ロールズは人間社会における正義をどのように捉えたのだろうか?
正義の原理―ロールズ―
近代の
「人間は生まれながらにしてかつである」
→公正な社会の基礎となる原理
功利主義が幸福をどのように分配するかを考えていない
→正しい分配のあり方を考える正義論を提唱
主著『』
人々が自分の境遇などを知り得ないでは以下の原理が適用される
第一原理:平等な自由の原理
すべての人が自由を等しくもつ
第二原理:格差原理(公正な機会均等の原理)
不平等が生じる場合、恵まれない人々の境遇の改善につながるものでなくてはならない
すべての人に機会が等しく与えられた結果でなくてはならない
これらはと呼ばれる
正義の原理によって、自由・機会・所得など、社会的基本財が公正に分配されると主張
不平等を是正することを正義の原理の1つとし、国家が所得を再分配することを主張
※自らの利益を追求する合理的な人々が共存される相互の合意によって成り立っている
社会的弱者を守るためには機会均等だけでなく、結果の平等を実現することが必要である
その考えは国家がとる社会保障政策などに反映される
ロールズの正義論に対しては、さまざまな立場から多くの批判がなされた
自由主義と共同体主義
自由主義と共同体主義は、それぞれどのような社会をめざしたのか?
個人の自由を最も重視
ロールズのように平等にも配慮する立場
のように自由を最大限に尊重する立場
個人の自由と経済的自由をできる限り認める
→経済活動への法的規制を最小限にすべきである
個人を社会的な存在として考え、共同体やその伝統を重視する
主著『』が有名
ロールズの考える個人は社会から孤立した存在である
⇔現実には、個人は社会のうちに位置づけられた存在である
他にもアメリカのなど
個人の善ではなく共同体全体の善であるの実現をめざす
能力の平等
1970年代後半
がを提唱
衣食住だけでなく、安全な飲み水や公衆衛生、医療、教育、雇用などの生活条件を含む
人間が生きていく上で最低限必要なものである
インド生まれの経済学者
アジアで初めてノーベル経済学賞を受賞
主著『不平等の再検討』
な扱い
各人のに配慮しようとすれば、不利な立場の人を優遇することが必要な場合がある
人間が社会で生活するのに必要なものが公正に分配されるだけでは不十分である
さまざまな事情からそれらを生かせない人々もいる
:健康である、社会に参加するなど、それらを用いて達成できる状態や活動
そうした機能をあわせたものをと呼ぶ
人々が潜在能力において平等であることを主張
より公正な社会として、人々の潜在能力を拡大することを福祉の目的とする社会を唱えた
1994年:が『人間開発報告書』でという概念を提起
飢餓や貧困、人権侵害などから人間の生活を守る
教育や所得などの人間的な暮らしに関する「質」を示す指数
平均余命や成人式自立、各段階の教育の総就学率、1人あたりのGDPなどで算出される
経済発展のためにはを利用することが不可欠である
公正な発展を推進するためにはの確立やの拡充が必要である
資産収入の拡大が所得格差を生み出す
→著書『21世紀の資本』で格差の是正を唱える
2000年:国連ミレニアム・サミットでが採択される
2015年までに世界のを半減させることを目標とする
cf.絶対的貧困:1日1.90ドル以下の生活を余儀なくされている人々の生活状態を指す
2015年:国連持続可能な開発サミットでが採択される
「誰一人取り残さない」という誓いのもと、2030年までの行動計画として決定される
環境破壊はなぜ生じるのか―共有地の悲劇―
概要
共有の牧草地で、農民達が羊を飼っている
その一人が、自分の利益を増やすため、羊を増やした
同様にほかの農民も羊を増やした結果、牧草がなくなり、全員が羊を飼えなくなった
共有地で一人ひとりが自分の利益を自由に求めると、共有地そのものが存続できなくなる
自分の利益を自由に求めるのは、公正という義務に反していない
⇔関係者が不幸になるため、正しくない
自然も人類の共有であり、一人ひとりが自然を自由に使うと、自然破壊につながる
環境破壊について考えるとき、未来の人々のことも考慮する必要がある
cf.
安楽死・尊厳死を認めるべきか
医療の進歩は多くの患者を救ってきた
医療が人間の生命の誕生や死にどこまで介入してよいのかという問題が生じた
e.g.回復の見込みのない、死期の迫った患者を人工呼吸器や人工栄養で生かし続ける
→望まない治療を打ち切り、患者が安らかな死や尊厳ある死を迎えられるようにすべき
患者本人の意思にもとづいて薬物などを与えることにより、死期を人為的に早める
患者本人の意思にもとづいて、効果のない過剰な延命治療を打ち切って、自然死させる
により、延命措置を望まない意思表示をする選択肢ができた
安楽死の是非
:多くの人にとって幸福であれば、認めるべきである
:一部の人の権利を侵害するおそれがあるから、認めるべきではない
との衝突
安楽死を合法化することによって、国が自分自身への殺人を認めることとなる
→法制化することによって、対象に圧力がかかる可能性も多分にある
安楽死を認めないことによって、「生き続けない」ことを選択できないこともありうる
→非合法であることによって、自己決定権の侵害となる可能性もある
医師の責務との衝突
医師は救命が最重要任務であるのにもかかわらず、命を諦める選択をせざるを得ない
安楽死を合法化することは、「国家による殺人」の容認でもある
cf.ナチス・ドイツのT4作戦
安楽死を名目として、「社会に不要な存在」を合法的に排除する
:優良とされた遺伝子を残し、劣等とされた遺伝子は淘汰すべきとする
現代にも根を下ろしており、さまざまな問題が生じている
e.g.障害者やハンセン病患者に対する不妊手術(優生保護法)
生命の質と生命の尊厳
:充実した人生を送ることに重きを置く
→生き方に優劣をつけることとなる
に限定されない
治療の過程で生じる様々な苦痛を和らげようとするアプローチ
:生きることそれ自体に重きを置く
→ただ長生きさせられることになる
2つの考え方を両立させることが重要である
臓器移植
1997年の制定以来、を行う場合には以下の条件が必要とされてきた
の書面による意思表示
cf.ドナーカードや運転免許証の裏面:どの臓器を移植させてもよいかを記載できる
の同意
経験のある医師2人以上の
脳死:不可逆的に脳の機能が回復する見込みがない状態を指す
2009年の改正で、ドナー本人の意思が不明の場合はの同意のみで臓器の提供が可能に
臓器提供の意思表示ができないとされるにも道を開いた
子どもの(臓器の受け取り手)の命を救う可能性もある
に優先的に臓器を提供する意思表示も可能となった
2009年の改正によって臓器を「提供しない」という意思を表示することが大きな意味をもつ
医療のあり方
の考え方に立つ医療のあり方
医師側に権力の非対称性がある
患者が医師から症状や治療法について十分なを受ける
それを理解してしたうえで治療方針を自ら選ぶ
→医師と患者が平等な立場であるように転換
生殖技術の進歩
「命の選別」はなされるべきなのだろうか
やで子どもが誕生するケースが増えている
の結果を受けてを選択するケースもある
受精卵の遺伝子を調べることにより、子どもの重篤な遺伝性疾患の有無や発症の確率を予測
につながる危険性がある
個人の将来の病気のかかりやすさを予測する
就職や保険加入、結婚の場面で差別を生む危険性がある
cf.
特定の遺伝子を生体細胞内に取り入れることで、先天性の疾患の治療を行う
の発達
不妊治療で使われなくなった受精卵を破壊して利用するという倫理的問題
他人の細胞であるため、移植の際に拒絶反応が起こるリスクがある
自分の細胞であるため、拒絶反応が起こりにくい
ヒトゲノムのDNAの塩基配列すべてを読み取ることを目標にした
→人間のクローンの作成ができるようになる可能性が高くなる
遺伝情報は究極のプライバシーであるため、慎重な取扱いが求められる
1997年:で「」が採択
人間のクローンの作成を禁じる
cf.クローン羊の
哺乳類の体細胞クローンの作成が可能であると知られるようになった
→拒絶反応のない移植用臓器の作成が可能になる
国内ではによって制限されている
トウモロコシなどのいくつかの作物に関して、の輸入が許可されている