イスラエル
イスラエルはなぜ建国され、現在も紛争が続いているのか?
イスラエルは一九四八年五月一四日に建国された、中東の地中海沿岸に位置するユダヤ人国家だ。パレスチナに故郷を持つユダヤ人が国際的な支援のもとに建国したこの国は、建国直後から周辺アラブ諸国との武力衝突が始まり、四次にわたる中東戦争を経験した。今日に至るまでパレスチナ人との紛争が続いており、ガザ地区・ヨルダン川西岸地区での軍事衝突、ユダヤ人入植地問題、パレスチナ国家樹立問題など多くの未解決課題を抱えている。イスラエルの建国とその後の歴史は、「民族の自決権」「難民の帰還権」「宗教聖地の帰属」という三つの問題が複雑に絡み合った現代最大の国際問題の一つだ。
イスラエル建国の経緯はどのようなものだったのか?
イスラエル建国の直接の背景は、一九世紀末から二〇世紀にかけて広まったシオニズム運動とナチス・ドイツによるホロコースト(約六〇〇万人のユダヤ人大量虐殺)だ。第二次世界大戦後、ホロコーストを生き延びたユダヤ人難民がパレスチナに大量に移住し、現地のアラブ人との対立が激化した。イギリスの委任統治下にあったパレスチナを管理しきれなくなったイギリスは問題を国連に委ね、一九四七年に国連パレスチナ分割決議(一八一号)が採択された。この決議はパレスチナを約五六パーセントのユダヤ人国家と約四四パーセントのアラブ人国家に分割する計画だったが、アラブ諸国はこれを拒否した。翌一九四八年五月一四日、ダヴィド・ベン=グリオンによってイスラエル独立宣言が行われた。同日、アメリカのトルーマン大統領がイスラエルを承認した。
イスラエルと周辺アラブ諸国の戦争はどのように展開されたか?
建国翌日の一九四八年五月一五日、エジプト・ヨルダン・シリア・イラク・レバノンがイスラエルに侵攻し、第一次中東戦争(独立戦争)が始まった。イスラエルはこの戦争に勝利し、分割決議よりも広い領土を確保した。この結果、七〇万人以上のパレスチナ・アラブ人が難民となった(ナクバ=大惨事)。一九六七年の第三次中東戦争(六日間戦争)ではイスラエルがエジプト・ヨルダン・シリアを相手に僅か六日間で勝利し、ガザ地区・ヨルダン川西岸地区・ゴラン高原・シナイ半島を占領した。これらの占領地に対するユダヤ人入植地の建設が現在も続いており、国際社会から国際法違反と非難されている。一九七九年のイスラエル・エジプト平和条約ではシナイ半島をエジプトに返還し、アラブ諸国として初めてイスラエルを承認した。
イスラエルとパレスチナの和平交渉はなぜ行き詰まっているのか?
一九九三年のオスロ合意(パレスチナ暫定自治協定)でイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)は相互承認した。これによりガザ地区とヨルダン川西岸地区にパレスチナ自治政府が発足したが、エルサレムの帰属・パレスチナ難民の帰還権・ユダヤ人入植地の扱いは先送りとなった。二〇〇〇年のキャンプ・デービッド交渉が決裂した後、第二次インティファーダが始まり、和平交渉は長期停滞した。二〇〇三年の中東和平ロードマップでは「二国家共存」が提示されたが実現には至っていない。二〇〇七年にはイスラーム系組織ハマスがガザ地区を支配し、ガザとヨルダン川西岸でパレスチナの政治的分裂が生じた。二〇二三年一〇月のハマスによる越境攻撃(約一二〇〇人死亡)とイスラエルのガザへの大規模報復攻撃により、パレスチナ問題は再び深刻な局面を迎えている。国連安保理ではアメリカが停戦決議案に拒否権を繰り返し行使し、国際社会の対応の限界が露呈した。
イスラエルの建国はユダヤ人にとっては二〇〇〇年の夢の実現であり、パレスチナのアラブ人にとっては「ナクバ(大惨禍)」だった。この歴史認識の根本的な差異が、和平を困難にする根本的な要因だ。イスラエルはアメリカの重要な同盟国であり、毎年約三八億ドルの軍事援助を受けている。国際社会ではイスラエルの政策を支持するアメリカ・一部のヨーロッパ諸国と、パレスチナへの連帯を示す中東・アフリカ・アジア諸国との対立が続いている。国連総会ではパレスチナを支持する決議が繰り返し採択されているが、アメリカの拒否権によって安保理での実効的な措置はとれていない。イスラエルは一九五八年に核兵器を保有したとされているが(公式には認めていない)、この事実も中東の安全保障をめぐる緊張の要因となっている。エルサレムはユダヤ教・キリスト教・イスラームの三つの宗教にとって最も神聖な都市であり、その帰属問題はパレスチナ問題の中で最も解決困難な部分だ。二〇一七年にアメリカのトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、大使館をテルアビブからエルサレムに移転したことは、アラブ・イスラーム諸国から強い反発を受けた。
イスラエル国内では、ユダヤ系市民の中でもアシュケナジム(ヨーロッパ系)とミズラヒム(中東・北アフリカ系)の格差、あるいは世俗的ユダヤ人と超正統派ユダヤ人の対立など、内部的多様性も存在する。アラブ系市民(人口の約二〇パーセント)はイスラエル国籍を持つが、ユダヤ系市民と同等の権利を享受していないと批判される側面もある。国際人権法の観点からは、ガザ地区の封鎖・ヨルダン川西岸での入植活動・検問所・分離壁など、イスラエルの対パレスチナ政策に対する批判が国連人権理事会・国際司法裁判所(ICJ)から繰り返し出されている。