第9章 国際政治の動向と課題

イラク・シリア・イスラム国

イラク・シリア・イスラム国

イラクシリアイスラム国とは何か

イラク・シリア・イスラム国(ISIL/ISIS)は、イラクとシリアの両国にまたがり領域支配を確立したイスラム過激派組織である。冷戦終結後の中東地域を象徴する国家崩壊と超国家型テロ組織の融合事例として位置づけられる。

呼称の複雑さ

組織は2013年4月にイラクのイスラム国をイラク・シリア・イスラム国に改称した。レバント地方を含めた地域呼称からISIL、シリアを含む地域呼称からISISとも呼ばれ、2014年以降は単に「イスラム国」を名乗った。国際的にはダーイシュの呼称も広く用いられる。

擬似国家の性格

組織は単なる武装集団ではなく、徴税・裁判・学校運営・社会インフラ提供など国家的機能を兼ね備えていた。2014年6月にはカリフ制国家の樹立を宣言し、最盛期には約1000万人を支配下に置いたとされる。

イラクシリアイスラム国はどのように成立したか

組織の成立には、イラク戦争後のイラク情勢とシリア内戦の混乱が同時に作用した。

イラクにおける基盤

2003年のイラク戦争後、スンニ派の疎外と治安空白の中で、アル=カーイダ系のイラクのイスラム国が誕生した。2011年の米軍撤退とシーア派主導政権の宗派対立によって、地域住民の一部支持を得るに至った。

シリア内戦の拡大

2011年のシリア内戦勃発により、組織はシリアに越境して勢力を広げた。アサド政権への抵抗勢力の混乱を利用し、2013年にはシリア北部で支配領域を確立した。これによってイラク・シリア両国にまたがる組織として再編された。

この組織の思想と統治はどのようなものか

組織はイスラム原理主義の極端な解釈に基づく厳格な統治を行った。

カリフ制の自称

2014年6月、指導者のアブー=バクル・アル=バグダディがカリフを宣言し、イスラム世界の唯一の正統な統治者であると主張した。これによりカリフ制の再興という歴史的目標を象徴する存在となった。

統治の実態

支配地域ではシャリーア法の厳格な適用、非ムスリム住民(キリスト教徒、ヤジディ教徒など)への迫害、女性の教育・就労制限、公開処刑などが行われた。ヤジディ教徒への攻撃は国連によってジェノサイドとして認定された。

この組織はどのように国際社会に影響したか

組織は中東地域のみならず世界全体に影響を与えた。

難民危機との関連

組織の侵攻と戦闘により、イラク・シリアから数百万人の難民・国内避難民が発生した。2015年のヨーロッパ難民危機は、この組織の勢力拡大が直接の原因の一つとなった。

国際的な対応

2014年以降、米国主導の有志連合、ロシア、イラン、クルド人勢力などが介入し、組織の領域支配は2019年までに崩壊した。しかし組織の残党と分派はアフリカ・アジア各地に拡散し、現在も国際的な脅威として存在し続けている。

監修者 taisa68
最終更新日 2026-04-23