大量破壊兵器
大量破壊兵器とは何か
大量破壊兵器(WMD)は、核兵器、生物兵器、化学兵器のように、一度の使用で大量の人命を奪うことのできる兵器の総称である。冷戦後の国際安全保障政策の中心概念の一つとして位置づけられる。
定義と分類
一般に核(Nuclear)、生物(Biological)、化学(Chemical)の3種類を合わせてNBC兵器、あるいはこれに放射能汚染(Radiological)を加えてCBRN兵器と呼ぶ。近年はサイバー兵器を追加する議論もある。
通常兵器との違い
通常兵器が戦場の軍事目標を攻撃するのに対し、大量破壊兵器は短時間で民間人を含む多数の犠牲を生む。このため、国際法は使用・保有・開発を強く制限している。
大量破壊兵器はどのように規制されてきたか
大量破壊兵器は国際条約によって体系的に規制されており、冷戦期から現代にかけて徐々に制度が整備されてきた。
核兵器関連条約
核兵器については、核拡散防止条約(NPT、1970年発効)、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年採択)、新START(2011年発効)などがある。2017年には核兵器禁止条約(TPNW)が採択された。
生物化学兵器関連条約
生物兵器禁止条約(BWC、1975年発効)、化学兵器禁止条約(CWC、1997年発効)が生物・化学兵器の開発・生産・保有・使用を全面禁止している。CWCは化学兵器禁止機関(OPCW)を通じて検証体制を備えている。
大量破壊兵器は冷戦後の国際政治でどう扱われたか
冷戦後、大量破壊兵器は主権国家間の対立だけでなく、非国家主体による拡散の脅威としても認識されるようになった。
イラク戦争の口実としての利用
2003年のイラク戦争では、イラクの大量破壊兵器保有疑惑が開戦の主要理由とされた。しかし戦後の調査で該当兵器は発見されず、大量破壊兵器概念は政治的に操作されうることが示された。
北朝鮮の核ミサイル開発
北朝鮮は2006年以降、計6回の核実験を行い、核兵器と弾道ミサイルの保有を既成事実化した。国連安保理制裁が繰り返されているが、完全な非核化には至っていない。北東アジアの安全保障にとって継続する課題となっている。
大量破壊兵器の拡散防止はどう取り組まれているか
大量破壊兵器の拡散防止は、冷戦後の国際安全保障の最重要課題として多面的に取り組まれている。
国際的拡散防止枠組み
IAEA(国際原子力機関)の保障措置、輸出管理レジーム(NSG、MTCR、オーストラリア・グループ)、拡散防止構想(PSI)など、多層的な枠組みが整備されている。これらの連携によって拡散リスクを抑制する仕組みが築かれている。
非国家主体への対応
テロ組織が大量破壊兵器を入手するリスクは冷戦後に新たな課題となった。国連安保理決議1540号(2004年)は全加盟国に拡散防止のための国内立法と取り締まりを義務付け、国際社会全体の責任を明確にした。