第1章 文明の成立と古代文明の特質

旧石器時代

旧石器時代

旧石器時代とはどのような時代なのだろうか

旧石器時代は、人類が打製石器を主な道具として使っていた先史時代の長い時期を指す。おおむね約260万年前から約1万1700年前までの期間にあたり、人類史の大部分を占める。地質時代では新生代第四紀の更新世とほぼ重なり、氷期と間氷期が繰り返された「氷河時代」の真っただ中である。猿人から原人・旧人を経て、新人(ホモ=サピエンス)が出現し世界に拡散するまでの進化・文化の発展がすべてこの時代に含まれる。狩猟・採集生活、火の使用、言語・芸術の芽生えなど、人類の基礎的な営みがこの時代に成立した。

旧石器時代はどのように区分されているのか

旧石器時代は、道具と化石人類の段階に基づいて前期・中期・後期の三期に区分される。前期旧石器時代(約260万〜30万年前)は、猿人と原人の時代で、礫石器(オルドワン文化)やハンドアックス(アシューリアン文化)が代表的である。中期旧石器時代(約30万〜4万年前)は、旧人(ネアンデルタール人)が主役で、ルヴァロワ技法を用いる剥片石器(ムスティエ文化)が発達した。後期旧石器時代(約4万〜1万1700年前)は、新人(ホモ=サピエンス)の時代で、石刃技法・骨角器・洞穴絵画・女性裸像など豊かな精神文化が開花した。

旧石器時代はどのような生活がなされていたのか

旧石器時代を通じて、人類は狩猟・採集生活を基本とした。集団は少数の家族単位で構成され、季節ごとに獲物を追い植物の採集を行いながら移動した。火の使用は寒冷地での生存を支え、衣服としては毛皮が利用された。旧石器時代後期に入ると骨針での縫合衣が登場し、住居は洞窟・岩陰に加え、テント状の仮設住居が作られた。道具は段階的に精緻化し、集団の枠を越えた石材や貝殻の交換が広域に行われた。埋葬・装身具・芸術表現といった精神的な営みも時代を追うごとに豊かになっていった。

旧石器時代の環境はどのように変化したのか

旧石器時代の大部分を占める更新世は、氷期と間氷期が約10万年周期で交代する変動の時代だった。氷期には北半球の高緯度地域が厚い氷床に覆われ、海水面が100メートル以上低下してベーリング陸橋やスンダランドといった大陸間の通路が形成された。マンモスやケブカサイ、大角ジカなどの寒冷地型大型哺乳類が繁栄し、人類の主要な獲物となった。間氷期には温暖な森林が広がり、多様な動植物が増えた。こうした環境の変化は、人類の移動ルート・狩猟対象・技術発展に大きな影響を与え続けた。

旧石器時代は人類史でどう位置づけられるのか

旧石器時代は、人類の身体的・文化的な基礎がすべて形作られた時期である。直立二足歩行・道具・火・言語・集団生活・芸術・埋葬といった、人間を人間たらしめる要素はこの時代に生まれ、磨かれた。約1万1700年前に最終氷期が終わり完新世が始まると、西アジアで農耕・牧畜が開始され、定住生活と土器・磨製石器の新石器時代へと移行する。旧石器時代は文字史料のない時代ではあるが、石器・骨・洞穴絵画という物的証拠を通じて、現代人類のあらゆる営みの出発点を語る、世界史の長大な冒頭章である。

監修者 taisa68
最終更新日 2026-04-22