第1章 文明の成立と古代文明の特質

更新世

更新世

更新世とはどのような時代なのだろうか

更新世は地質時代の区分の一つで、約258万年前から約1万1700年前までの期間を指す。日本ではかつて洪積世と呼ばれており、現在の地質年代体系では新生代第四紀の前半にあたる。更新世は氷河時代とも呼ばれ、地球規模での寒冷化と温暖化が繰り返された時期である。人類史でいえば、猿人の末期から原人・旧人の全期間、さらに新人による世界拡散の大部分をこの更新世が包み込んでおり、先史時代の主要な舞台となる地質時代である。

更新世はなぜ「氷河時代」と呼ばれるのか

更新世には、極地や高緯度地域が厚い氷床で覆われる氷期と、氷床が後退する温暖な間氷期が、およそ10万年周期で交互に繰り返された。最盛期には北ヨーロッパ、北アメリカ北部、シベリア北部が広大な氷床に覆われ、ヒマラヤやアルプスなどの高山にも広範な山岳氷河が発達した。海水が氷として陸上に蓄えられた結果、海面は現在より100メートル以上低下し、日本列島と大陸、ジャワ島と東南アジア大陸、そしてアラスカとシベリアが陸続きとなる「大陸棚の陸橋」が形成された。これらの陸橋は、後の原人・新人の拡散経路となる。

更新世の気候はどのような仕組みで変動したのか

更新世の氷期・間氷期の繰り返しは、地球の軌道要素の周期的な変化(ミランコビッチ・サイクル)によって説明される。地球の公転軌道の離心率、自転軸の傾き、歳差運動が組み合わさって日射量の変動を生み、それが海洋大循環や大気中の二酸化炭素濃度と連動して気候変動を増幅する仕組みである。この気候変動は動植物の分布を大きく動かし、サバンナの拡大や森林の退縮を通じて、人類進化の環境圧を周期的にもたらした。寒冷化は厳しい生存条件を強いる一方で、新しい環境への適応を促す原動力でもあった。

更新世の環境は人類進化にどう影響したのか

更新世の寒暖の振幅は、人類の進化に大きな圧力を与え続けた。森林と草原の境界が動くことで食料資源の分布が変わり、集団は移動と適応を迫られた。火の使用・毛皮の衣服・洞穴住居・埋葬の習慣といった文化は、寒冷期を生き抜くための対応から発達した面が大きい。更新世末期の寒冷期には、マンモス・ケブカサイ・大型シカなどの大型哺乳類が繁栄し、人類にとって重要な狩猟対象となった。原人・旧人・新人は、こうした変動する環境のもとで、より高度な道具と社会組織を段階的に獲得していった。

更新世は人類史とどう結びついているのか

更新世という地質時代は、そのまま旧石器時代に対応する。猿人の末期からホモ=エレクトゥスによる最初の出アフリカ、ネアンデルタール人の繁栄、そしてホモ=サピエンスの世界拡散はすべて更新世の中で起きた出来事である。ベーリング海峡が陸橋化していた時期にアメリカ大陸への移住が始まり、人類はほぼ全世界に到達した。約1万1700年前に氷河時代が終わり、温暖で安定した完新世に入ると、農耕・牧畜の始まりと定住社会の成立が可能となる。更新世の終わりは、先史時代から新石器時代・文明時代へと世界が移っていく転換点である。

監修者 taisa68
最終更新日 2026-04-22