第10章 国際経済の動向と課題

44_国際経済のしくみ

要点解説 資料集

自由貿易と保護貿易

貿易を見るとき、どの立場から自由貿易と保護貿易を考えるべきだろうか?

 

  貿易によって各国は、互いの不足を補い合うことができる

   各国間で生産費や生産性などの条件が異なる

    →各国が、国内で相対的により安く生産できるの生産に

     資源や労働力、資金を有効に活用することができる

      =

       の最高形態と捉える

        に基づく国際取引を主張

 

  イギリスの経済学者によって唱えられる~『経済学および課税の原理』

   国際分業が当事国双方に利益をもたらすとして、を主張

特化前
特化後
  

ラシャ生産
1単位に必要な労働量(生産量)
ブドウ酒生産
1単位に必要な労働量(生産量)
ラシャ生産
1単位に必要な労働量(生産量)
ブドウ酒生産
1単位に必要な労働量(生産量)
イギリス
100人
120人
220人
0人
ポルトガル
90人
80人
0人
170人
総生産量
(2単位)
(2単位)
(2.2単位)
(2.125単位)

 ※ラシャは毛織物を指す

 イギリス:ラシャ1単位の生産に100人を要し、ブドウ酒1単位の生産に120人要す

 ポルトガル:ラシャ1単位の生産に90人を要し、ブドウ酒1単位の生産に80人要す

 このとき、ポルトガルはどちらの生産についてもがある

   ⇔イギリスの方が相対的に小さなコストでラシャが作れる

    このとき、イギリスはラシャの生産にがある

     →イギリスはラシャの生産に、ポルトガルはブドウ酒の生産にすればよい

      このように特化を進めると、総生産量も増加し、双方が利益を得られる

 ~ドイツの経済学者によって唱えられる

  途上国が工業化をはかるために、先進国からの競合製品を関税などによって輸入制限

  将来発展しそうな産業を保護・育成する

   →が進む

  どのように産業を保護するのか

   :高率のを課して国内販売価格を分だけ高くする

   の限定、輸入課徴金、手続の複雑化

         などで国内産業を保護する


 現在の国際経済

  先進国~の推進を求める

  途上国~の必要性を主張する

 多国籍企業と国際分業

  :一方が一次産品を、他方が製造業品を輸出入しあうような分業のあり方

   現状:発展途上国がから脱却できない

  :同一産業に属する製造業品を双方向に輸出入しあうような分業のあり方

  近年、多国籍企業の途上国への進出と途上国の工業化に伴い、水平貿易が進んでいる

   国境をまたいで部品をやりとりするや、本社と子会社が取引するが増加



自由貿易をめぐる課題

自由貿易をめぐる課題には、どのようなものがあるのだろうか?

 自由貿易のメリットとデメリット

  メリット:

  デメリット:

   →デメリットは特定の産業や地域に集中して出やすい傾向がある

    e.g.アメリカ~「ラストベルト」(錆び付いた地帯)

 産業構造の固定化

  生産性が上昇しにくい産業に固定化された国は、不公平感を感じやすい

   e.g.リカードの比較生産費説

    ラシャ生産は当時の先端産業であるため、イギリスは技術革新によって生産性が向上しやすい

    ブドウ酒生産は伝統産業であるため、ポルトガルは技術革新による生産性向上が起こりにくい

  「自由貿易は往々にして、有利な産業を手にした強者の論理として用いられているのでは?」

 一人勝ちの産業の出現

  ITなどの知識集約産業によるサービスの取引の増加

   特定の企業が市場に独占的な力をもつような傾向がみられるように

    GAFA:Google, Apple, Facebook(現Meta), Amazon

     ビジネスの基盤を担うプラットフォーマーとも呼ばれる

      自国にそのような企業をもたない国は、何らかの形で企業活動に制限をかけることもある


[志賀櫻『タックス・イーター 消えていく税金』岩波新書]
 関税はその始まりにおいては、財政収入を目的とするものであった。このような目的の関税を財政関税という。いまでは国内産業の保護を目的とする保護関税が主である。その保護関税に関連して「国境関税」という概念がある。国境関税とは、輸出入に関して講じられる、あらゆる措置の総称である。保護関税も国境措置のひとつである。一方、輸入禁止や数量制限などのように、関税ではない輸出入に関する国境措置を「」という。
 こうした国境措置については、農業分野と工業分野との間の利害対立がつねに問題となる。関税その他の国境措置がタックス・イーター(注)と関わりをもつのは、この利害対立の場面においてである。日本の場合、農業分野は保護主義を求め、工業分野は自由貿易を求める。
 国境措置を講じて国内の産業を保護することには一長一短がある。外国製品の影響から保護しようとするあまり、かえって国際競争力の喪失につながるケースもある。
(注)タックス・イーター……国民の税金を食い荒らし、日本経済の屋台骨を蝕む存在



国際収支

国際的なお金の動きは、どのように表されるのだろうか?

 

  特定期間に行われた一国の国際的な経済取引を貨幣額で表示したもの

  黒字の場合、外国からの通貨の受け取りが多く、外貨準備高はする

  赤字の場合は外国への通貨の支払いが多く、外貨準備高はする

  2013年までの国際収支

   :財・サービスなどの取引

    自国が貨幣を受け取る場合をプラス、外国へ支払う場合をマイナスと計上

     受け取る額>支払う額の場合、黒字である

    ① 

     :財の輸出入取引

     :輸送、旅行、保険、特許料などのサービス取引

    ②:投資収益、雇用者報酬

    ③:対価を伴わない消費財援助

   

    ①:直接投資、証券投資など

    ②その他資本収支

  2014年からの新統計

   :財・サービスなどの取引

    自国が貨幣を受け取る場合をプラス、外国へ支払う場合をマイナスと計上

     受け取る額>支払う額の場合、黒字である

    ① 

     :財の輸出入取引

     :輸送、旅行、保険、特許料などのサービス取引

    ②:投資収益、雇用者報酬

    ③:対価を伴わない消費財援助

   :金融資産・負債の取引

    対外資産(自国が外国に対して保有する資産)

    対外負債(外国が自国に対して保有する資産)が

     増加する場合をともにプラス、減少する場合はともにマイナスと計上

     →資産と負債の差額が金融収支となる

     金融収支がプラスの場合は

       マイナスの場合は

    ①直接投資  ②証券投資  ③金融派生商品  ④その他投資  ⑤外貨準備

   :債務援助やインフラ無償援助など

   :統計を作成するうえで生じる不整合

  

  

 国際収支の例

  e.g.アメリカで出版されている経済学の教科書を、日本にいる学生がインターネットを通じて購入する取引

     →に計上される

  e.g.日本人の外国への旅行

   →に計上される

  e.g.日本政府がで、アフリカの国々に食糧品や医薬品購入のための資金援助を行う取引

     →に計上される

  e.g.日本政府が発展途上国に対して固定資産を援助した場合

   →に計上される

 旧統計と新統計の違い

  対外直接投資が増える

   旧:ため、と表示された

   新:と表示される

    が拡大すると、やがてが拡大していく

     海外資産が増えた場合、利子や配当などが発生する

 

  

 日米の国際収支の歴史

  1980年代

   日本のの多くが対米輸出であり、が問題化していた

  1980年代:アメリカの「」~を同時に抱えている

  1985年:

   誘導を背景に、日本企業のが増加

    →旧統計のが大幅なを記録

  2000年代まで

   が大幅であり、も大幅を記録

   海外投資は超過状況にあったため、も大幅を記録する傾向がある

   を上回っていたが、2005年以降は逆転

    →モノを作ってする国から過去の資産を海外でして稼ぐ国となっている

  2003年・2004年:が34年ぶりにを記録

  2011年

   の影響もあり、旧統計のを記録

    下請メーカーが被災しが寸断されて生産が減少

    による輸出の低迷、原発停止に伴う

     →が1980年以来、31年ぶりにを記録

  2011~15年:を記録

   韓国や中国の製品の輸出が伸長する

  





外国為替と外国為替市場

他国と貿易をするとき、通貨の価値はどのように換算されるのだろうか?

 

  自国通貨と外国通貨との交換比率

   e.g.円建て為替相場:1ドルが何円と交換されるのかを示す

  ドルや円などの主要通貨の為替相場は外国為替市場における需給の関係によって決まる

   =

    e.g.が行われた場合

     →が供給されての需要が高まるため、となる

    1ドル=200円から1ドル=100円になった場合

      

      →

   1ドル=100円から1ドル=200円になった場合

    

      →

  

   など

   cf.:自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定される

    日本の国際収支の主要項目がとなる

     投機的な需要が高まることでとなる

     逆にとなると需要が減退することでとなる

    日本からの輸出増

     受け取ったドルが外国為替市場に供給されるたね、になりやすい

     逆に輸入が増加するととなる

    日本からの海外旅行者が増加する

     国際収支がとなり、となる

     逆に日本への海外旅行者が増加するととなる

    日本からの海外投資が増加する

     国際収支がとなり、となる

     逆に日本への対内投資が増加するととなる

    利子率が日本よりアメリカの方が高い

     アメリカで資金を運用した方が得になるため、になりやすい

    日本の物価が高くなる

     円の価値が下がるため、になりやすい



 e.g.日本とアメリカの貿易

円高(ドル安)
1ドル=100円
10,000×100円
 =100万円
5×100円
 =500円
円安(ドル高)
1ドル=120円
10,000×120円
 =120万円
5×120円
 =600円
影響
円安になれば20万円も高く売れる
 →ドルで支払う場合、輸出品は
するためとなり、する
※貿易摩擦の原因の一つ
円高になれば100円も安く売れる
 →ドルで支払う場合、輸出品はするためとなり、する

 景気への影響

  になると国内の物価はし、景気はすることが多い

   →輸入有利・輸出不利→国際収支赤字基調→国内通貨量減少→

  になると国内の物価はし、景気はすることが多い

   →輸入不利・輸出有利→国際収支黒字基調→国内通貨量増加→

 為替政策

  を抑えるため、を行う
  •   を克服するため、を行う