第2章 人間としてよく生きる

06_宗教の教え

資料集

宗教の教え

宗教と社会

宗教は社会においてどのような役割を果たしたのだろうか?

 

  人々は神や仏など超自然的な存在を信仰する

   :ユダヤ教、ヒンドゥー教、神道などのように特定の民族間で信仰されている

   :キリスト教、仏教、イスラーム教のように民族を超えて広く信仰されている

    e.g.:キリスト教、仏教、イスラーム教

  世界の成り立ちや真理、人間にとっての生きる意味など多くの智恵を示してきた

  宗教儀礼……参加する人々に連帯感をもたらし、社会秩序を維持する

   同じ宗教を信じる人々は、聖典などを通して教義を信じることで、共通の慣習や文化をもつ

  宗教は人々の間をつなぎ、その宗教を信じる人々の社会を基礎づけている



キリスト教

キリスト教は人間をどのようにとらえ、人間の生き方や社会のあり方をどのように説いているのだろうか?

 

  キリスト教の母胎宗教で、)の民族宗教

  聖典:『

  異民族の支配のもと多くの迫害を受け、唯一絶対の裁きの神への信仰を形成する

   彼らを救済するを待望していた

  :ユダヤ人が神から選ばれた民族だとする

  :神が定めたを厳格に守ることが人間としての正しさとした

モーセの~「出エジプト記」『旧約聖書』
 ①あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
 ②あなたはいかなる像を造ってはならない。
 ③あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
 ④安息日を心に留め、これを聖別せよ。
 ⑤あなたの父母を敬え。
 ⑥殺してはならない。
 ⑦姦淫してはならない。
 ⑧盗んではならない。
 ⑨隣人に関して偽証してはならない。
 ⑩隣人の家を欲してはならない

   e.g.モ「十

    →貧しいがゆえに律法を守ることのできない人々は罪人として蔑視されていた

 キリスト教

  によって説かれる

  聖典:『

   「時は満ち、は近づいた。悔い改めてを信じなさい」

  :すべての者に無差別に与えられる愛(

  神の愛を信じて神を愛し、すべての人を愛する(

  

   神の国は人間の互いの心において、神の愛と平和の交わりとして実現する

山上の垂訓(冒頭部分)
 心の貧しい人々は、幸いである。天の国はその人たちのものである。
 悲しむ人々は、幸いである。その人たちは慰められる。
 柔和な人々は、幸いである。その人たちは地を受け継ぐ。
 義に飢え乾く人々は、幸いである。その人たちは満たされる。
 憐れみ深い人々は、幸いである。その人たちは憐れみを受ける。
 心の清い人々は、幸いである。その人たちは神を見る。
 平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。
 義のために迫害される人々は、幸いである。天の国はその人たちのものである
「マタイによる福音書」第5章3~10節、『新約聖書』

   貧しい人や虐げられてきた人に大きな喜びと慰めをもたらす

  『』の「

   イエスは罪人とされた遊女、徴税人、異邦人、病者と深く関わり、食事をともにした

   律法で安息日とされた日にを癒やした

  人間は生まれながらにである

   →すべての人間はについて悔い改めなければならない

  と呼ばれるようになったの思想を批判

   →形式的にを守ることよりも神を信じる内面的な信仰心が重要であるとした

  神はすべての者にと呼ばれるの愛を注ぐ

   →罪深い人が救われるためには、への愛とを実践することが必要だとした

  ユダヤ教の律法主義に反するとされ、の刑に処される

   イエスの死は人間がもっている根源的な罪()をイエスが贖ったの死と理解される

   十字架上で処刑されたイエスが、その3日後にしたとされる

    →イエスを救世主()とするが生まれる

     後にとなる



 後世への影響

  

   の哲学を導入し、キリスト教の教義を哲学によって体系化

   自然の光に基づく理性による真理に対して、恩寵の光に基づくの優位を説く

   →両者の調和を導いた

  人と人との対等な

  反戦論、人種差別撤廃、生命への畏敬を求める現代


イスラーム

イスラームでは社会をどのように捉えていたのだろうか?

 イスラーム:唯一絶対の神を信じる一神教で、で開かれる

  開祖:

   ガブリエルを通じてを受ける

    →自分が神のであると自覚するようになる

   神は唯一であり、自分はその使徒である

   人間は平等であり、孤児や貧者などの弱者を扶助すべきことなどを説く

  622年:

   アラブ世界では部族中心の多神教が広く信仰されていた

    →一神教であるイスラーム教は迫害を受けた

   に移住し、を築いていった

    ムハンマドは宗教指導者であるとともに政治的・軍事的指導者でもあった

     630年にはメッカを征服し、聖地とする

     ウンマを防衛・拡大するためのが信者の義務とされる

    ムハンマド亡き後、信者たちは歴代カリフのもとに勢力を急速に拡大

  『』:イスラームの聖典(啓典)

   信者は『クルアーン』を根本規範とする

   ムハンマドの言行に関する伝承()に示された生き方を慣行()として生きる

   社会生活全体にわたる(イスラーム法)が整備されている

   ※の聖書の聖典として認められる

    ユダヤ教徒・キリスト教徒を「」と呼ぶ

 

  

  

  とも呼ばれ、信者の相互扶助やに用いられる

 イスラームはユダヤ教とキリスト教を先行宗教と位置づける

  ユダヤ教の預言者たちは同じ神から啓示を受けたとし、イエスも預言者であるとする



 イスラームの神:現世を創造し、支配し、終焉させる()全知全能の神

  人間に恵みを与える慈悲深い神である

  ですべての人間を復活させて裁き、永遠のにおける各人のあり方を決める義の神

 ムハンマドを最大で最後の預言者であるとする

  ムハンマドにしても神性は否定され、あくまでも人間である

  偶像であらわすことも許されない(

  絶対的な神の前ではみな平等である

 イスラームの宗派

  がある

   の解釈をめぐって宗派争いがおこる

  9世紀の「知恵の館」を中心にギリシアの哲学・科学の文献の多くがさかんにアラビア語に翻訳

   イスラーム独自の哲学・医学・数学・天文学などの学問が発展した

    →ラテン語に訳されて西欧にも伝わる



仏教

仏教の開祖シャカは人間の生き方をどのように捉えていたのだろうか?

 などのインド思想

  :生命が永遠無限に繰り返すという思想

  などは後の

 ゴータマ=シッダッタ

  物質的に恵まれるものの、人生の意味について悩むようになる

   6年間の苦行の末にも何も得られず、苦行を捨てて菩提樹のもとで瞑想を行う

    35歳のときに悟りを開き、以後と呼ばれる

  生涯をかけて自らが体得した真理()を説き続け、教団が形成される

   生前のブッダの言葉をまとめたものが経典となる

 :常に変化し、永遠の実態は存在しない

  →を否定

 仏教における苦しみの真理

  :生老病死の苦しみ

  :愛するものとはいつかは別れる

  :憎むものと出会う

  :求めるものが得られない

 

  刻々と変化する心と身体から成り立つ人間存在そのものが苦しみ悩むことから離れられない

  ※五蘊:物質的要素である色と精神的要素である受、想、行、識の集まり

 の道理から苦の原因を探求(縁起説)

  すべての物事には原因がある

  :真理に対する無知  :自己や自己の所有物に執着する心

  :我執から生まれる欲望や怒り

   :欲望、怒り、無知

 ~苦しみに関する4つの真理

  :現実世界は苦である       :苦は執着よりおこる

  :執着をなくすことで苦は滅する

  :苦をなくすための正しい修行方法は八正道である

 :自己への執着を断ち切り、苦しみを克服するための実践

  :正しいものの見方  :正しい思考  :正しい言葉

  :正しい行為  :正しい生活  :正しい努力

  :正しい気づき  :正しい精神統一

  苦行に専念するわけでも快楽の追求をするわけでもないである

 

  :原因と条件からうみだされたあらゆる事物は必ず変化して消えていく

  :この世の一切は苦である

  :それ自体で存在する不変の実体はない

   欲望や執着を断ち切ることでとなり、できる

    煩悩の炎が滅して心が平安になった状態(

 

  生きとし生けるものすべてのもの()に対する思いやりの心()の実践

   当時の身分制度に反対し、その人のなした行為こそが重要であるとした

 ブッダの死後、とに分裂し、さらに複数の部派に分かれる

  =の成立

 西北インドに異民族の侵入

  一部の部派と在家者たちのなかからの運動がおこる

 大乗経典の主題

  

   =

    の実践を行う

     (教えを授けたり、財を与える)、(戒律を守る)

     (苦難に耐え忍ぶ)、(仏道修行に努力する)

     (瞑想し精神を統一)、(真理をきわめた悟りの認識)を実践

    『法華経』などに生き生きと描かれる

  誰でもブッダと等しい境地を得ること()ができると強調する

   :あらゆるものには本来的に仏たる本性がある



中国思想

孔子は人間のどのような部分を重要視したのだろうか?

 春秋・戦国時代:富国強兵に努めてと呼ばれる思想家が現れる

  の思想)は後世に大きな影響を与えた

   cf.法家の思想~

    厳格な法律と刑罰による国家統治を説くを説く

     外面的な強制によって社会秩序を維持しなければならない

 ~『』『

  春秋時代末期の魯の国に生まれる

  「朝に道を聞かば、夕に死すとも可なり」

   「道」:人間関係の普遍的な原理(

    ~人を愛する心

     :両親や祖先への敬愛  :兄や年長者への従順

      →

     「孝悌なるものは、それ仁の本なるか」

     

     :自分のわがままを抑えること  :自分を偽らない真心

     :他人への思いやりの心  :他者を欺かないこと

    ※仁は内面的、精神的な道徳

    :実践には客観的な形式に適うことが必要

     「己に克ちて礼に復る()を仁と為す」

      一切の行為を社会的な規範としての礼に合致させることが仁である

      礼は仁から出発してはじめて普遍的に価値あるものになり、形式的でなくなる

       →仁の徳を体得した者を理想の人間像とした

  :仁の完成と自己の道徳的完成をめざす人間

  完全な理想的人格である聖人になることは難しいが、君子には努力すれば誰でもなれる

  ※小人:仁を伴わない人間

  人徳を備えた人が政治を行えば、社会の秩序は安定する

   

    

     の理想形

      人々が従うべきを説いた

 の成立

  前漢時代に国家の教学として採用される

  (『詩経』『書経』『易経』『春秋』『礼記』)

   →(『論語』『孟子』『大学』『中庸』)を重視するようになる

 の創始者

  

   世界は万物を貫く宇宙の原理であると、万物の物質的な素材であるによって構成される

  

   理は万物を成立させる規範的な原理であり、人間の本性でもある

    ⇔現実の人間は、気に基づく私欲に妨げられて本質を完全に発揮することができない

  

   私欲を抑制して内なる理に従う

  

   事物の理の究極に至ることで知を極めるべきこと

    →に理と一体となった聖人となる方法を求めた

     の道が開けるとした

  後に江戸幕府のもとで幕藩体制やを正当化する思想の柱となる

 の創始者

  

   人間の心の本体こそが理である

    理は心に先天的に備わる善悪を判断する能力()を発揮するところにあらわれる

     →この良知をきわめて生きること()が求められる

  

   真の知と実行することは同一である



 (老荘思想、道家思想)

  「大道廃れて仁義あり」

   儒家の主張する仁義などの道徳は、社会の混乱を回復させる手段にすぎない

  「」:万物をうみだす根源、あらゆる現象を成立させる原理

   人間の知性や感覚では認識できず、その意味で道は「」ともいわれる

  

   万物は道から生じて道に帰る

   万物からは何もしていないように見える(

   万物が自分自身で行動するという形であまねく働いている(

    →理想の君主は道の働きに任せた無為の政治を行う者をいう

     人々が素朴で質素な生活に自足する小規模な共同体として描き出す(

  政治思想の枠をこえ、を求めるものとして受容される

   :執着を抑えて執着を捨てる

   :柔軟でへりくだった心をもつこと が人間の生き方の指針とされる