第1章 社会を作る私たち

04_現代社会と青年の生き方

資料集

現代社会と青年の生き方

伝統文化と和の精神

日本の社会にみられる和の精神とは、どのようなものだろうか?

 にみられる和の精神

  の第1条

  「和を以て貴しとなし、忤ふることなきを宗とせよ」

   →集団のなかで、自他が和やかに調和することに優先的な価値を置き、共同体の倫理とする

    共同体の和を乱すような個人の行為や言動は恥ずべきものと考えられる

     e.g.官庁・会社などで広くおこなわれている稟議

      事前の根回しと文書回覧による決定は、組織の調和を重視する伝統的な方法の現代版

  

   の精神を国づくりに取り込もうとした

 表面的な意見である「」と本当の考えである「」を使い分ける


伝統文化と若者文化

若者文化にみられる特徴とは何だろうか?

 現代の若者の特徴

  ①各自の意見や考え方の違いを明らかにして、共通理解を作り出すことが苦手

  ②はっきりとした自己主張をすることで、人間関係に問題をきたすと考えがち

   e.g.「……ですよね?」(半疑問形)

     「私的には……」のような言い回しで自分の主張をぼやかす

     直接の会話ではなく、携帯電話で意思を伝え合う

      →自分が傷つくことをおそれつつ、なめらかな人間関係を求める「優しさ」のあらわれ

   cf.「ウォームなやさしさ」「ホットなやさしさ」

 

  人々が社会的生活で作りあげてきた考えや行動、生活様式の総体

   e.g.など

   ユースカルチャー(若者文化)

  :神や仏など超自然的な存在を信じ、それを信仰することで心の平安や希望を見出そうとする

  :根底に存在して変化しにくい生活様式

  :一時的かつ外面的に発言する、変化しやすい生活様式

 日本文化

  日本古来のの上に儒教、仏教、キリスト教などの習俗や東西文化が融合した

 


新しい生き方を求めて

福沢諭吉は新しい生き方として、何を提示したのだろうか?

 ~『

  欧米諸国を歴訪し、近代ヨーロッパの文物・制度・思想を紹介

  個人のと合理的な学問の発展を重視する

   cf.「演説(演舌)」~公衆の面前で自分の主義・思想や意見を述べることの重要性を説く

 伝統文化の特質を深く理解し、何が欠けているのかを見極めることが必要

  福沢諭吉が求めた独立自尊が求められる時代

福沢諭吉『学問のすゝめ』
 人は生まれながらにして貴賎貧富の別なし。ただ学問を勤て物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。……もっぱら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり。……
 独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず。独立とは自分にて自分の身を支配し他に寄りすがる心なきを言う。みずから物事の理非を弁別して処置を誤ることなき者は、他人の智恵によらざる独立なり。みずから心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財によらざる独立なり。人々この独立の心なくしてただ他人の力によりすがらんとのみせば、全国の人はみな、よりすがる人のみにてこれを引き受くる者はなかるべし。

   →国際社会の中で個人としての責任を自覚し、対等な立場で議論することが必要



日本の伝統・文化と私たち

日本人の自然観や倫理観はどのように形成され、受け継がれてきたのだろうか?

 日本人と自然

  古代の日本の人々は、不可思議な力をもち、畏怖の念を起こさせる存在をと呼んだ

   →あらゆるものにカミが宿る

    ただ一人の人格神ではなく、と呼ばれる無数の神々

  『

   次々に神々を生み出すような「うむ」神々であり、次々と「なる」神々とされた

   →「自ずから」という自然観を反映

 カミは自然を通して豊かな恵みをもたらす存在である

   一方で疫病や天災などの災厄ももたらす存在

    →人々はカミに対して収穫の恵みを感謝し、災厄から逃れることを願った

     =

  神を祭る神事は現代の年中行事に受け継がれ、神をまつる儀礼としてが成立している

   e.g.:節分の豆まき、田植え、端午の節句、七夕など

  自然と対立することなく、親しみをも感じながら共存する感性

   →現在に至るまで日本人の宗教観や道徳観、世界観の基礎となっている

    cf.~優美なを歌う趣味がみられる

      :日本の風土を分析し、とした

    cf.西洋の自然観:西洋は自然をする対象とした

類型
風土
(東アジア)
豊かだが、ときに猛威を振るう自然
、忍従的
農耕
砂漠(中東、北アフリカ)
厳しく死に満ちている自然
対抗的、戦闘的
遊牧
牧場(ヨーロッパ)
穏やかで従順な自然
自発的・合理的
農耕と牧畜


  日本人の:出生儀礼、生育儀礼、婚礼儀礼、年祝い、葬送儀礼、祖霊化儀礼

   民俗学では人の生活を(日常)と(非日常)の循環としてとらえる

    ケ(日常)→→ハレ(非日常)~日常で生じたケガレをハレの儀式で祓う

   正月などの行事ではを祀るために、門松などの目印を用意する

 日本の農村社会で見られた家どうしの協同のあり方

  同属の分家が本家から受けた恩義に報いる上下身分的なもの

  各家が平等に労働力や財を出し合って共同作業を行うがある

 

 による日本人の特性論

  :しめやかでありながら突発的に激しい感情を示す

  :突発的な激しい感情を示しつつも突然諦める

 による日本人の特性論~『

  共同体のを重んじ、常に世間の思惑や他人の目を気にしながら行動する

   =「」と規定した

    欧米は「」として、内面的な罪の意識に基づき行動する傾向が強い

 による特性論

  日本文化:上下関係を重視する 西洋文化:契約関係を重視する

 日本人が重視してきた倫理観

  古代の日本人:を重視

   嘘偽りがなく、飾らず、明朗で曇りなき心を指す言葉

   仏教の受容が始まる

    cf.~『』を著す

     

      「和を以て貴しとなし、忤ふることなきを宗とせよ」

      「篤く三宝を敬へ。三宝とは仏法僧なり」

     「

      ~この世はむなしく、仏の悟りのみが真実である

  中世の日本人:武士道を重視

   仏教を受容し、様々な信仰が芽生える

    e.g.:阿弥陀仏の西方浄土(極楽)に生まれ変わる往生を願う

   平安仏教

    (伝教大師)

     大乗戒壇を設立

     の教え

      「」:生きとし生けるものはすべて仏になりうる可能性がある

      密教にも接近(台密)

    (弘法大師)

     の教え

      この世のすべては大日如来の表れである

     

      人は修行によってこの身のままで大日如来と一体化できる

       →現世利益、加持祈祷の重視



   鎌倉仏教

    

     阿弥陀仏の本願を信じ、ひたすら「」と称えるの道

     念仏により誰もが平等に阿弥陀仏の力()で往生し、浄土で悟りを得る

     「われ浄土宗を立つる意趣は、凡夫の往生を示さんがためなり」

    

     の自覚

      →:自己の無力を深く自覚する人間こそ、阿弥陀仏の救いの対象である

       すべてを阿弥陀仏のはからいに任せる

     「

    ~『

     すべての者にがある

      自力の修行(座禅による悟り)

      :ひたすら座禅  :身も心も一切の執着から解き放たれる

     :座禅の修行それ自体が悟り(証)そのものである

    ~『

     」という題目を唱える唱題が救いに至る道である

  中世の美意識~「」などの美

   :茶道の美を大成させる

   :「」や「」といった能楽の美を確立

  江戸時代:社会秩序を支える道徳としてが重視される

   儒教~が創始

    と礼を重視する教え

     仁の根本には(父母に孝行し、兄や年長者に従順であること)がある

      :利己心を抑えること  :自分を偽らない真心

      :他人への思いやり    :人を欺かない心

       →孝悌が他人に向かうと克己や忠、恕、信を実現できる

   

    の重視

    :つつしみをもち、礼や法度につくことが重要である

    :人間には自然と同じく上下の差別がある

   (日本

    形式や身分秩序を重んじたを批判

    の重視~分け隔てなくすべての人を敬うべきを説いた

    :人間の本性に備わる、善悪を判断する良知を働かせることが重要である

    :孝を時・処・位を考慮しつつ実践すべきである



   

    中国の学派の解釈に頼らず、を主張

    仁愛を重要視し、仁愛の根底に、自他に対して純粋な心のありようであるを置いた

    誠とは日常生活におけるの実践となってあらわれると説く

伊藤仁斎『語孟字義』
 誠とは道の全体だ。だから聖人の学は、必ず誠を根本にし、そして、その多くの言葉は、みな人に誠を尽くさせる方法でないものはない。いわゆる仁・義・礼・智、いわゆる孝・弟・忠・信は、みな誠をその根本にし、そして誠でないと仁が仁でなく、義が義でなく、礼が礼でなく、智が智でなく、孝・弟・忠・信もまた孝・弟・忠・信であることができない。このためにいう。「誠でなければものはない。」



   

    中国の学派の解釈に頼らず、を主張

    :道とは中国の古代の先王や聖人がつくりあげたものである

    人間の内なる性に従うのではなく、外である道により善に至るべきである

   

    江戸期に町民や農民に石門心学を広める

    商人倫理を説く~職業に貴賎の別はない(の否定)

     「正直行はるれば、世間一同に和合し」

   本居宣長

    

     日本の古典に基づいて日本古来の純粋な考え方を見出そうとする

     儒教や仏教などの漢意の影響を受ける前の、本来の真心が古代にあったと主張

    日本古来のの道を説く

     カミの振る舞いにそのまま従う

      →人間性を道理によって理解することを退けた

    人間のあるべき姿は、ものに当たるときに自然とわきあがるにつくこと

     仏教や儒教の説く理屈や議論をとして否定

   

    西洋諸国に対抗するためには科学技術の移入が必要である

    「」とともに「」を深く学ぶべきだと唱えた



 日本の近代化と個のとらえ直し

  幕末の開国以来、西洋の文化・思想が広く受容される

  

   封建制度を支えた儒教道徳を批判する

    :人は生まれながらにして天から等しく人権を与えられている

     cf.「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」

   西洋の実用的・実利的な実学を学ぶ

    →の精神をもつべきであるとする

     「

  

   ルソーの『社会契約論』を『』として訳出

    →自由民権運動の理論的指導者となる~「

   

    徐々にを獲得していくことを主張

  

   :キリスト教()と武士道の精神(

    自己の使命を日本に根ざしたキリスト教の確立とする

     、非戦論に現れる

    cf.~「太平洋の架け橋」になるとし、『武士道』を英文で発表

  

   日本の近代化と個人の出現にどのように向き合うべきか

    日本の近代化は「」を欠いた「」である

     →日本人は自己の確立が遅れていると批判

   に生きる

    の境地に至る

  

   善の根本を愛として、愛による人類の統一的発達をめざす

   主客を没した、知情意が一つになった意識状態が唯一の真の実在

   

    直接経験を重視し、身体的であり行為する自己を意識

     →知情意一体の人格の実現がである~「善とは一言にていえば人格の実現である」

  

   西洋の思想が個人を中心として社会や人間関係を考察していることを批判

   人間は社会的存在であり、人と人との関係のなかで存在するである

    社会の中で埋没することなく自我を確立し、自我を否定して社会に立ち返ることを繰り返す



  

   内村鑑三らとともに札幌農学校に学びに入信

   「」ことを志して渡米~後に国際連盟の事務次長を務める

    →プロテスタントの一派のを信仰するようになる

   日本人の精神を世界に広く知らしめるべく『』を英文で著した

 民俗学と戦後民主主義思想

  

   民衆の日用品としての価値しかなかった品々に、固有の価値を見出す

    →という概念を与えた

  ~『

   村落共同体に生きるごく普通のの日常生活に注目

   を提唱

    信仰や風俗、民間伝承などから人々の生活の姿を探求し、日本文化の基底をとらえようとした

  

   日本では自己の信条に基づき、責任をもって行動する主体性が育まれないことを指摘

    主体的な個の確立をめざす