大国一致の原則
大国一致の原則とは何か
大国一致の原則とは、国連安全保障理事会の実質事項の議決において、常任理事国5か国すべての賛成を必要とする意思決定方式を指す。反対に1か国でも反対票を投じれば決議は成立せず、これがいわゆる拒否権の制度的根拠となっている。
原則の核心
原則の核心は、国際平和と安全に関わる重要な決定を、軍事的にも政治的にも影響力を持つ大国の合意なしには行わないという点にある。全会一致ではないが、5大国に限っては意思一致が必要とされる。
この仕組みは、国際連盟期の全会一致制が機能不全に陥った反省を踏まえて設計された。大国が国連から離脱する事態を避け、国際機構を実効的に維持するための制度的工夫でもあった。
大国一致の原則はどのように機能するか
大国一致の原則は、国連憲章第27条に条文化されている。手続事項は9か国以上の賛成で決まるが、実質事項では常任理事国すべての同意が必要となる。
議決の仕組み
安保理の議決は15か国の投票によって行われる。実質事項では9か国以上の賛成に加え、米・英・仏・露・中の常任理事国5か国すべての同意が必要となる。棄権や欠席は反対と扱われないのが慣行となっている。
この仕組みのもとでは、常任理事国1か国の反対だけで国際平和に関わる決議が成立しない。冷戦期には米ソが互いに拒否権を多用し、安保理が機能不全に陥る場面が繰り返された。
大国一致の原則はなぜ採用されたか
大国一致の原則が採用された背景には、国際連盟が全会一致制のもとで機能不全に陥り、第二次世界大戦の発生を止められなかった歴史的反省がある。戦後の新しい国際機構には、別の仕組みが必要とされた。
制度設計の経緯
ダンバートン=オークス会議とヤルタ会談を経て、大国間の合意を必須とする議決方式が具体化された。ソ連は拒否権の範囲を広くとる立場をとり、最終的に実質事項に限定する形で妥協が成立した。
大国を国連の枠組みにとどめ、機構の実効性を担保するという政治的要請が、制度設計の根底にあった。常任理事国の特別な地位は、戦勝5大国としての現実の力関係を国際制度に反映させたものといえる。
大国一致の原則と関連する制度概念
大国一致の原則は、単に議決方式の一規則にとどまらず、安保理全体の性格を規定する原理として働いている。関連する制度と合わせて理解することで、国連の構造上の特徴が見えてくる。
関連制度との接続
この原則は拒否権制度と一体であり、常任理事国の政治的特権の中核をなす。冷戦期の安保理停滞に対応して採択された「平和のための結集」決議は、総会が代替的に勧告を出す手続きを整える試みであった。
2022年のウクライナ侵攻でも、当事者であるロシアが拒否権を行使したことで安保理が機能不全に陥り、大国一致の原則の限界が改めて問われた。国連改革の議論では、この原則の見直しが中心論点の一つとなっている。