領海
領海とは何か
領海とは、沿岸国の主権が及ぶ、領土に接する一定範囲の海域である。国家の領域のうち海に相当する部分で、陸地と同じように主権が及ぶ。ただし、外国船舶の無害通航権という特有の制約が課されており、完全な主権と自由航行の調和を図る仕組みが働いている。国連海洋法条約が現代の領海制度の基礎となっている。
領海の幅はどう決まっているか
国連海洋法条約第3条は、領海の幅を基線から12海里までと定めている。1海里は約1852メートルなので、12海里は約22キロメートルである。基線は通常、海岸の低潮線を採用するが、海岸線が複雑な場所や群島などでは、直線基線や群島基線が採用されることもある。
領海の幅は、長らく国際法上の論点だった。かつては3海里という古い基準もあったが、現代では12海里が世界標準となっている。日本も1977年に領海法を制定し、領海の幅を12海里としている。ただし、一部の海峡については、国際海峡としての自由な通過を保障するため、3海里を維持している特定海域もある。
基線はどのように引かれるのか
通常の基線は、海岸の低潮線である。地図上の海岸線に沿って線を引き、そこから海側へ12海里を測る。しかし、海岸線が極めて不規則な場合や、島々が連なっている場合には、直線基線を用いることが認められる。
直線基線は、海岸の適切な地点を結んで引く直線である。これにより、複雑な海岸線を持つ国でも合理的な領海設定が可能になる。日本も本州、四国、九州などの沿岸で直線基線を用いている。群島国家のインドネシアやフィリピンは、群島基線という特殊な方式を採用し、群島全体を囲む直線を基線とする仕組みを使っている。
領海では沿岸国はどのような権利を持つのか
領海では、沿岸国は領土と同等の主権を行使する。船舶の航行、漁業、海洋調査、環境保護など、あらゆる活動を国内法で規制できる。ただし、外国船舶の無害通航権という国際法上の制約があり、これが領海の特殊性を支えている。
領海における沿岸国の主権はどう及ぶか
国連海洋法条約第2条は、沿岸国の主権が領海に及ぶと定めている。漁業資源の利用、海洋資源の採掘、航行の規制、海洋汚染の取り締まり、海上警察権の行使など、沿岸国は広範な権限を持つ。外国船舶が沿岸国の法令に違反した場合、沿岸国は自国の法律に基づいて処罰することができる。
軍事目的の活動も沿岸国の主権下にある。原則として、外国軍艦が領海内で訓練を行ったり、情報収集活動を行ったりすることは、沿岸国の許可が必要である。沿岸国は、安全保障の観点から領海内の外国船舶の活動を厳しく管理することができる。
無害通航権とは何か
条約第17条から第32条は、外国船舶の無害通航権を詳細に規定している。無害通航とは、沿岸国の平和、秩序、安全を害しない通航である。商船はもちろん、軍艦も原則として無害通航権を持つ。ただし、軍艦の無害通航には一部の国が事前通告や許可を求めるなど、国ごとに運用の違いがある。
無害通航の要件には、領海内での漁業、海洋調査、汚染行為、軍事演習、情報収集、兵器の訓練などの禁止が含まれる。沿岸国は、無害通航を害する行為を防止するための法令を制定できるが、通航自体を差別的に制限することはできない。これは、沿岸国の主権と国際的な航行の自由の調和を図る重要な仕組みである。
領海はどのような現代的な意味を持つのか
領海は、沿岸国の主権の重要な一部であると同時に、国際的な航行、漁業、安全保障の接点でもある。現代では、領海をめぐる紛争、国際海峡の通航、海上犯罪への対処など、多様な課題が領海の運用に関わっている。
国際海峡と領海の関係はどうか
領海が重なり合う海峡は、国際航行の要所となる。国連海洋法条約は、国際海峡における通過通航権を定めている。通過通航権は、沿岸国の領海内であっても、海峡を通過する船舶や航空機の継続的かつ迅速な通航を保障する権利である。
ジブラルタル海峡、マラッカ海峡、宗谷海峡、津軽海峡などが代表的な国際海峡である。日本は、津軽海峡、対馬海峡、大隅海峡、宗谷海峡、宗谷海峡を特定海域として、領海を3海里に抑え、海峡の中央に公海部分を残す形を取っている。これは核搭載艦船が日本領海に入るのを避ける政策的判断とも関連しているとされる。
海上の警察権と安全保障はどう関わるか
領海内では、沿岸国は海上の警察権を行使する。密漁、密輸、密入国、海賊、環境犯罪などに対応するため、海上保安機関が巡視船を配備して監視している。日本の海上保安庁は、領海内外の警察機能を担う重要な機関である。
近年は、領海侵犯が外交問題となる事例も増えている。尖閣諸島周辺での中国公船の領海侵入、竹島周辺での韓国船の活動、北朝鮮の不審船の領海侵入事件など、領海をめぐる緊張が国際的に注目されている。領海は、沿岸国の主権と国際的な航行の自由が接する場として、現代でも重要な法的概念であり続けている。