気候変動ネットワーク
気候変動ネットワークとは何か
気候変動ネットワークは、気候変動問題に取り組む国際的なNGOや市民団体の連合を指す言葉である。英語ではClimate Action Networkと呼ばれ、CANと略される。1989年に設立された国際的な気候NGO連合が代表的な存在で、世界130か国を超える地域の1500を超える団体が加盟する巨大なネットワークである。国連気候変動交渉の場で市民社会の声を代表する重要な主体となっている。
ネットワークの成立経緯は何か
1980年代後半、気候変動が科学的に確認され、国際政治の議題に上り始めた。各国の環境NGOは、情報共有と協力を進めるために連携を模索した。1989年3月、ドイツで気候変動に取り組むNGOが集まり、気候行動ネットワークCANが正式に設立された。
以後、CANは地域ノードを各地に展開し、日本を含むアジア太平洋、ヨーロッパ、北米、中南米、アフリカなどに地域連合が作られた。日本では気候ネットワークなどの団体が加盟し、国内の気候政策の提言と国際連携を担っている。CANは世界で最大級の環境NGO連合として、気候交渉の場で一定の地位を確立している。
ネットワークの活動目的は何か
CANの基本目的は、気候変動を抑制する政策と行動を世界規模で推進することである。具体的には、温室効果ガスの排出削減、再生可能エネルギーの普及、気候変動への適応、気候正義の実現、途上国支援などを柱としている。
活動方針は科学的知見に基づいて策定される。気候変動に関する政府間パネルの報告を基礎に、世界の平均気温の上昇を産業革命前比1.5度以内に抑えるといった具体的目標を掲げ、各国の政策にその目標を反映させるよう働きかけている。市民の立場から、国家や企業が直面する難しい選択を後押しする役割を担っている。
CANはどのような活動を展開しているか
CANの活動は、国連気候変動枠組条約の締約国会議での提言、各国の気候政策への働きかけ、市民社会への啓発活動、国際的な情報発信など多岐にわたる。グローバルな連携と地域に根ざした運動を組み合わせる点に特徴がある。
国連気候変動交渉ではどう関わるか
CANは、毎年開催される国連気候変動枠組条約締約国会議に代表団を派遣している。交渉の状況を毎日分析し、Eco誌と呼ばれるニュースレターを発行して、NGOの視点から交渉の課題と提言を示している。各国代表団や報道関係者に広く読まれ、交渉に影響を与える情報源として機能している。
化石賞という皮肉な賞を毎日発表し、その日の交渉で最も後ろ向きの姿勢を示した国を公表することでも知られる。日本が何度もこの賞を受けたことがあり、国際社会の気候政策評価に対する市民社会の視点を伝える場として注目を集めている。ユーモアのある手法で、硬直しがちな外交交渉に市民社会の眼を持ち込んでいる。
市民社会への働きかけはどうか
CANと加盟団体は、気候変動に関する科学的知見の普及、政策提言、抗議行動、署名活動、啓発キャンペーンなどを展開している。若者、女性、先住民、労働組合、信仰コミュニティなど、多様な社会集団と連携し、気候運動の社会的基盤を広げている。
近年はグレタ・トゥーンベリさんに象徴される若者気候運動や、気候を求めて行進するグローバル気候ストライキなど、大規模な街頭運動とも連携している。CANはこうした運動の触媒として、専門的な知見と国際的な調整能力を提供し、市民社会全体の気候行動を強化する役割を担っている。
気候変動ネットワークの意義と課題はどこにあるか
CANは、気候変動という地球規模の危機に対して、市民社会が国境を越えて連携する最大級の試みである。一方、各国政府の意思、産業界の利害、社会的不平等など複雑な現実の中で、科学的知見と政治的行動の間を埋める役割を果たし続けている。
市民社会主導の国際政策形成モデルとしての意義は何か
CANの活動は、市民社会が科学的知見と道徳的立場を基盤に、国際政策形成に実質的に関わる可能性を示してきた。気候変動枠組条約、京都議定書、パリ協定などの重要な国際合意の形成過程で、CANを含むNGOが具体的な条文作りや評価に関わった事例は多い。
こうした市民社会主導の国際政策形成モデルは、人権、平和、環境、保健など他の領域でも展開されており、CANはそのモデル発展の一翼を担っている。国際政治の伝統的な主体である国家と、新しい主体である市民社会の協働の在り方を、気候分野で最も発達させた組織の一つと言える。
課題と今後の展望はどうか
気候変動の進行は科学が警告する速度を上回り、世界の対応は依然として不十分である。CANは、NGO間の調整の難しさ、資金確保、南北格差、市民運動の持続性など、内部的な課題にも直面している。また、地政学的対立や経済的危機の中で、気候政策が二次的な問題として扱われやすい傾向もある。
今後は、気候変動への適応、気候損失と損害への支援、気候難民の支援、公正な移行の確保など、複雑化する課題への対応が求められる。CANは市民社会の連携を維持しつつ、先住民や青年、労働者、脆弱な地域の声を国際政策に届ける役割を続けていく。気候変動問題の解決には、科学、政治、市民社会の連携が不可欠であり、CANはその連携の中核を担う重要な主体であり続けている。