女性差別撤廃条約
女性差別撤廃条約とはどのような条約か
女性差別撤廃条約は、正式名称を女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約といい、女性に対する差別の撤廃と男女平等を包括的に定めた国際人権条約である。1979年に国連総会で採択され、1981年に発効した。国際人権規約と並ぶ現代の人権条約の主要な柱の一つである。
条約成立の背景はどうなっているか
国連は設立当初から女性の地位向上に取り組んできた。国連女性の地位委員会が1946年に設けられ、女性参政権に関する条約や既婚女性の国籍に関する条約などの個別条約が作られた。1967年には女性差別撤廃宣言が採択され、包括的な条約への道が開かれた。
1975年の国際女性年や、その後の世界女性会議は条約化の機運を高めた。そして1979年に条約が採択され、1981年に発効した。日本は1985年に批准し、男女雇用機会均等法の制定や国籍法の改正など、国内法の整備を進める大きな契機となった。
条約が禁止する差別とは何か
条約第1条は、女子に対する差別を性に基づく区別、排除、制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他いかなる分野においても、女子の基本的人権及び基本的自由の享有や行使を妨害する効果または目的を持つものと定義している。意図だけでなく結果も重視する点が特徴である。
条約は、公的分野の差別だけでなく、家族関係や文化的慣行の中の差別にも踏み込んで対応する。教育、雇用、医療、法的能力、結婚と家族生活など、幅広い分野をカバーし、国家の立法、行政、司法の全ての分野で差別撤廃の措置を求めている。
条約はどのような仕組みで履行されるのか
条約の履行監視のために女子差別撤廃委員会が設置されている。締約国の定期報告審査、総括所見の発表、一般勧告の採択などを通じて、国際的な基準形成を担っている。選択議定書を批准した国では個人通報制度も利用できる。
女子差別撤廃委員会はどんな役割を持つか
女子差別撤廃委員会は23人の独立した専門家で構成される。締約国は原則4年ごとに実施状況を報告し、委員会はこれを審査して総括所見を発表する。総括所見は法的拘束力はないが、国際的な評価として各国の人権改善の参考となる。
委員会は一般勧告も採択する。これは条約の条文解釈や政策の指針を示す文書で、女性への暴力、HIVエイズと女性、武力紛争と女性、災害と女性など、さまざまなテーマについて発表されている。一般勧告は条約の具体的な適用を導く重要な指針となる。
選択議定書と個人通報制度は何か
1999年に採択された女性差別撤廃条約選択議定書は、個人が委員会に通報を行う制度を定めている。締約国での国内救済を尽くしたうえで、条約違反を受けた個人や集団が申立てを行い、委員会の意見と勧告を求めることができる。
日本はこの選択議定書を批准していない。そのため、日本では現在、個人通報制度を利用することはできない。女子差別撤廃委員会は日本に対して、選択議定書の早期批准を繰り返し勧告しており、これは継続的な政策課題となっている。
女性差別撤廃条約は現代日本にどんな影響を与えているか
1985年の批准以降、条約は日本の女性政策と法制度に大きな影響を与えてきた。男女雇用機会均等法、育児介護休業法、男女共同参画社会基本法などが条約の精神に沿って整備されている。同時に、委員会からの勧告を通じて、残された課題も継続的に示されている。
条約批准が国内法に与えた影響はどうか
条約批准の前提として、日本は国籍法の父系優先主義を改め、父母両系主義に切り替えた。1985年には男女雇用機会均等法が制定され、雇用における性差別の禁止が法律の形になった。1999年の男女共同参画社会基本法は、男女が対等な立場で社会に参画することを基本理念として定め、国の政策全体を方向付ける位置を占めている。
選択的夫婦別姓、女性の再婚禁止期間、性犯罪の刑法改正、女性天皇や皇位継承をめぐる議論なども、条約の精神と国内法の関係を問うテーマとなっている。委員会は、民法の差別的規定の廃止、政治分野での女性参画の促進、雇用や賃金の男女格差の是正などを繰り返し勧告している。
残る課題とジェンダー平等の方向はどうなっているか
日本のジェンダーギャップ指数は国際的に低位が続いている。政治、経済分野での女性の参画が進まず、指導的地位にある女性の割合が諸外国に比べて少ない点が特に問題視されている。女性への暴力、性差別的な広告、メディア表現なども委員会から繰り返し指摘されてきた。
条約と委員会の勧告は、日本社会の構造的なジェンダー不平等を可視化する重要な役割を果たしている。選択的夫婦別姓、同性パートナーシップ、性的少数者の権利など、広い意味での性と平等に関する議論とも結び付きながら、条約は日本の人権保障の継続的な羅針盤として機能している。