沖ノ鳥島
沖ノ鳥島とはどのような島か
沖ノ鳥島は、東京都小笠原村に属する日本の最南端の島である。東京の南方約1700キロ、北緯20度25分、東経136度5分に位置する。サンゴ礁に囲まれた極めて小さな島で、満潮時に海上に出ているのは北小島と東小島のわずかな岩だけである。日本の排他的経済水域を広く支える重要な基点として、国際法と現実の国家実行の接点を示す島である。
沖ノ鳥島の地理と状況はどうなっているか
沖ノ鳥島は太平洋の北フィリピン海盆に位置し、大きな円形のサンゴ礁、東西約4.5キロ、南北約1.7キロから成る。サンゴ礁の周囲の海域は日本領海、その外側の200海里は排他的経済水域として広大な範囲を占める。しかし、常時水面上に露出している陸地は極めて小さい。
北小島は長さ2メートル、高さ約1メートル、東小島は長さ約3メートルの岩である。これらの岩が満潮時にも水面上に残るように、日本政府は護岸工事を行い、周囲をコンクリートで固めて波浪から守っている。人は常住しないが、気象観測施設、海水温度計、離岸堤などが整備されている。
歴史と領土としての位置付けはどうだったか
沖ノ鳥島の存在は欧州の航海記録にも古くから残っていたが、国際法的な帰属は長く確定しなかった。1931年、日本は東京府小笠原支庁に編入して正式に日本領土と位置付けた。第二次世界大戦後の一時期はアメリカの施政下に置かれたが、1968年の小笠原返還協定により日本に復帰した。
沖ノ鳥島は気象観測や海洋調査の重要な拠点として、戦前から軍事的にも注目されていた。戦後の日本は、島のほぼ消失しかねない現実に対して、護岸工事を重ねて維持を続けてきた。1987年からの大規模工事では、消波施設が設けられ、島の存続を確保する取り組みが本格化した。
沖ノ鳥島をめぐる国際法上の論点は何か
沖ノ鳥島は、国連海洋法条約でいう島か、それとも岩礁に過ぎないのかという論点で議論を呼んでいる。島であれば200海里の排他的経済水域と大陸棚を生じるが、岩礁に過ぎないとされれば12海里の領海しか生じない。日本の海洋権益の広がりに直結する重要な問題である。
国連海洋法条約第121条の規定はどうなっているか
国連海洋法条約第121条第1項は、島を自然に形成された陸地であって水に囲まれ満潮時においても水面上にあるものと定義する。第2項は、島には通常の領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚に関するルールが適用されると定める。第3項は、人間の居住又は独自の経済生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域や大陸棚を持たないと規定する。
つまり、通常の島と岩は異なる法的地位を持つ。沖ノ鳥島の自然状態の陸地は極めて小さく、人間の居住や独自の経済生活を維持できるかについて疑問を呈する声もある。日本は、沖ノ鳥島は第121条にいう島に当たり、周囲にEEZと大陸棚を設定する資格があるとの立場である。
中国などの異議はどう展開されているか
中国は、沖ノ鳥島を岩礁と位置付け、排他的経済水域の設定には法的根拠がないとの立場を表明してきた。周辺海域で海洋調査を行う中国の活動は、日本のEEZ内での無断調査として日本側の抗議を受けているが、中国はそもそもEEZ自体を認めないという姿勢を取ることがある。
南シナ海で中国が人工島を造成し領有権を主張する一方、沖ノ鳥島は岩礁と主張する姿勢は、整合性を問う議論を呼んでいる。2016年の南シナ海仲裁判断は、沖ノ鳥島に直接言及しないが、第121条3項の解釈について基準を示した。日本はその基準の下でも沖ノ鳥島は島の要件を満たすとの立場である。
沖ノ鳥島の経済的、戦略的な意義は何か
沖ノ鳥島は日本の最南端の島として、広大なEEZと大陸棚を日本にもたらしている。水産資源、海底鉱物資源、航路管理、海洋気象観測など多面的な価値を持つ。気候変動による海面上昇は、島そのものの存続に影響しうる新しい課題となっている。
排他的経済水域としての意義はどうか
沖ノ鳥島の存在により、日本は周囲約40万平方キロのEEZを主張できる。これは日本の国土面積を超える広さであり、日本の海洋権益の維持にとって極めて重要な意味を持つ。排他的経済水域内では、日本が漁業資源や海底資源に関する主権的権利を行使できる。
周辺海域にはマグロなどの回遊魚を含む豊富な漁業資源がある。また、海底にはレアメタルを含むマンガン団塊やコバルトリッチクラストなどの鉱物資源の可能性も指摘されている。国連大陸棚限界委員会が2012年に認定した日本の延長大陸棚の一部は、沖ノ鳥島を基点として設定されており、将来の資源開発の観点からも重要な意味を持つ。
島の保全はどう進められているか
沖ノ鳥島は自然のままでは波浪と風化で失われる危険がある。日本は1987年から1993年にかけて、約300億円を投じて護岸工事と消波堤の建設を行い、島を守ってきた。その後も補修工事が繰り返し行われ、島の存続が維持されている。
2000年代以降は、港湾機能の整備も進められた。船舶が接岸できる施設や桟橋の建設により、調査や補修がより円滑に行えるようになった。国土交通省は沖ノ鳥島港の整備を進めており、海洋資源開発の拠点化も視野に入れている。気候変動による海面上昇で島の維持はますます難しくなるとされるが、日本は国際法上の根拠を守りつつ、沖ノ鳥島の存続と広大な海洋権益の確保を続けている。