黄色人種(モンゴロイド)
黄色人種(モンゴロイド)とはどのような分類なのだろうか
黄色人種、別名モンゴロイドは、19世紀以降の伝統的な人種分類で、東アジア・東南アジア・シベリア・北極圏・アメリカ大陸の先住民を指した集団である。モンゴル高原を本拠とする人々に由来する名称で、18世紀末にドイツの学者ブルーメンバッハが人類を五分類した際に用いた区分の一つである。肌は黄色から褐色で、髪は黒くまっすぐ、目の周囲に蒙古ひだがある、顔が平たい、といった特徴が挙げられてきた。しかし、現代の遺伝学では、これらの特徴は環境適応の結果であり、人類を区切る生物学的実体を伴わないことが明らかになっている。
黄色人種はどのような分布をもつとされたのか
黄色人種の分布地は非常に広く、東アジア(中国・韓国・日本)、東南アジア(ベトナム・タイ・インドネシア)、中央アジア・シベリア北東部、さらにはベーリング陸橋を越えて渡ったアメリカ大陸の先住民、北極圏のイヌイットまでを含むとされた。この広い分布は、東アジア起源の集団が氷期にベーリング陸橋を経由してアメリカ大陸に広がった歴史と関係している。しかし実際には、これらの地域の人々の身体的特徴には大きな多様性があり、単一の「黄色人種」として括るのは実態と合わない部分が多い。
黄色人種の特徴はどのような仕組みで生じたのか
伝統的に黄色人種の特徴とされた蒙古ひだや平たい顔は、寒冷で乾燥した気候への適応として進化したと考えられている。厚い皮下脂肪と頬の脂肪は寒冷に強く、蒙古ひだは風雪や強い日射しから目を守る働きがあるとされる。髪が黒くまっすぐな傾向や、黄色味を帯びた肌の色も、東アジア・シベリアの気候環境に長期間曝された結果の適応と見なされる。つまり、これらの特徴は「生物学的な人種」ではなく、数万年にわたる環境圧への自然選択の産物にすぎない。
黄色人種の概念は現代科学でどう評価されているのか
現代の遺伝学は、東アジアやアメリカ先住民の集団間の遺伝的な差異を詳細に研究している。その結果、東アジア人と東南アジア人、アメリカ先住民の間には、地理的な距離に応じた連続的な違いはあるものの、明確な境界はないことが分かっている。同じ「モンゴロイド」に分類される集団内でも遺伝的多様性は大きく、人類全体の多様性のごく一部を占めるにすぎない。肌の色や顔立ちは目に見える違いとして強い印象を与えるが、それは人類のゲノム全体のほんの一部に由来する表層的な差である。
黄色人種は世界史でどう位置づけられるのか
黄色人種という概念は、19〜20世紀に西洋と東洋を対比する図式のなかで利用されてきた。「黄禍論」のように東アジア諸民族を脅威として描き出す政治的言説や、植民地支配・移民制限の正当化に使われた歴史をもつ。他方、先史時代の人類拡散史が示すように、東アジア・シベリア・アメリカ大陸先住民の祖先は、アフリカから広がったホモ=サピエンスの流れの一部であり、人類全体の多様性のなかの一つの枝にすぎない。黄色人種を学ぶことは、差別の歴史を批判的に検討しつつ、アジアを含む人類の一体性を確認する契機となる。