第1章 文明の成立と古代文明の特質

先史時代

先史時代

先史時代とはどのような時代なのだろうか

先史時代とは、人類が出現してから文字を発明して記録を残すようになるまでの時代を指す。文字史料を用いて検証できる歴史時代とは区別され、遺跡から出土する石器・骨・化石などの物質資料を手がかりに復元される。最古の人類が登場したのは約700万年前とされており、文字の発明はおよそ5000年前のことであるから、先史時代は人類史の99パーセント以上を占める長大な時期となる。

先史時代はどのように区分されているのか

先史時代は使用された道具や生活形態を基準にいくつかの段階に分けられる。石器を主な道具とした石器時代は、打製石器を用いる旧石器時代と、磨製石器や土器を伴う新石器時代に大別される。旧石器時代はさらに前期・中期・後期に細分され、猿人・原人・旧人・新人という化石人類の段階と対応づけられる。新石器時代に入ると、狩猟・採集中心の生活から農耕・牧畜を伴う定住生活へと移行し、やがて金属器の使用へと発展していく。

先史時代はなぜ文字を持たなかったのか

先史時代は、人々が思考や経験を記号で体系的に記録する技術を持たなかった時代である。言語そのものは言語中枢の発達に伴い早い段階で生まれたと考えられているが、文字は社会が複雑化し行政や商取引の必要が高まった段階で初めて発明された。それ以前の情報は口伝や儀礼、洞穴絵画のような視覚表現によって世代間に継承されたが、後世に確実な形で残らない。したがって先史時代の研究は、石器・土器・骨角器・人骨・住居址などの物的証拠を通じて行うしかない。

先史時代を研究する方法はどのようなものか

先史時代の復元は、考古学・人類学・地質学・遺伝学などの総合によって進められる。考古学は遺跡から出土する遺物と遺構の型式・分布を分析し、地層の積み重なりから時間的前後関係を明らかにする。放射性炭素(C14)年代測定やカリウム・アルゴン法といった自然科学的手法によって、遺物の絶対年代を推定できる。近年ではDNA解析の発達により、現生人類の拡散経路やネアンデルタール人との交雑の有無まで明らかになりつつある。

先史時代は世界史の中でどのような位置にあるのか

先史時代は世界史の出発点であり、人類が生物として進化し、道具・火・言語・文化を獲得していく基盤の時期である。ここで成立した狩猟・採集社会の仕組みや、移動による世界各地への拡散、さらに農耕開始へとつながる生活様式の変化は、後の四大文明の成立や国家形成を可能にする前提条件となった。文字史料が存在しないため歴史が語られにくい時代であるが、現代人の身体・言語・文化の原型はこの長い先史時代の中で形づくられたものである。

監修者 taisa68
最終更新日 2026-04-22