ラミダス猿人
ラミダス猿人とはどのような化石人類なのだろうか
ラミダス猿人は、約440万年前のエチオピアに生きた初期人類で、正式にはアルディピテクス=ラミダスと呼ばれる。1992年にアメリカの古人類学者ティム・ホワイトらがエチオピアのアファール地方アラミス遺跡で最初の化石を発見し、1994年に新種として命名された。その後、2009年には部分骨格「アルディ」の詳細な分析結果が発表され、アウストラロピテクスよりも古い段階の人類像を具体的に描けるようになった。サヘラントロプスとアウストラロピテクスの中間に位置する、人類進化の初期段階を代表する化石である。
ラミダス猿人はどのような身体的特徴をもつのか
ラミダス猿人の身長は約120センチメートル、体重は50キログラム前後、脳容積は300〜350ccと類人猿とほぼ同じである。骨盤と下肢は直立二足歩行に対応した構造をもつが、足の親指は類人猿のように大きく開き、木をつかむことができる点が特徴的である。つまりラミダス猿人は、地上では二足歩行、樹上では四肢を使って自在に移動するという二つの移動様式を併せもっていた。手は長く、指は類人猿ほど曲がっておらず、ナックルウォーク(指の背を使った歩行)はしていなかった。
ラミダス猿人はどのような環境で暮らしていたのか
ラミダス猿人が発見された地層からは、森林環境を示す植物化石や動物化石が多く出土する。当時のエチオピア高原は、草原に覆われたサバンナではなく、疎林と草地が入り交じる比較的湿潤な環境だったと復元されている。ラミダス猿人はこの森林的な環境で、地上と樹上を行き来しながら果実・種子・木の根・小動物などを食べる雑食の生活を送っていたと考えられる。森林環境で直立二足歩行が成立していたという事実は、「人類は草原で二足歩行を始めた」という従来のサバンナ仮説に修正を迫るものとなった。
ラミダス猿人の発見はなぜ重要なのか
ラミダス猿人の発見が重要なのは、人類とチンパンジーが分岐した直後の姿をより詳しく知る手がかりを与えた点である。ルーシーで知られるアファレンシスよりも古く、ほぼ完全な骨格が残っているため、初期人類の移動様式・食性・体格を総合的に復元することができた。犬歯が小さく、他個体を威嚇する類人猿的な長い犬歯をもたないことは、雄同士の攻撃性が弱まり、集団内の社会関係が穏やかだった可能性を示唆する。こうした身体・行動の両面から、人類進化の初期段階が具体的に描き出された意義は大きい。
ラミダス猿人は人類史でどう位置づけられるのか
ラミダス猿人は、サヘラントロプスとアウストラロピテクスの中間に位置する、人類進化の橋渡しを担う化石である。その系統が直接アウストラロピテクスを経てホモ属に至ったのか、別系統で絶滅したのかについては議論が続いているが、少なくとも二足歩行と樹上行動を併せもつ姿は、人類が現代のような完全な地上動物になる前の段階を示している。世界史の冒頭において、人類の進化は一直線ではなく、複数の種が並行して存在する「多様性のなかの進化」だったことをよく示す存在として、世界史学習でも重要な位置を占める。