ホモ=エレクトゥス
ホモ=エレクトゥスとはどのような化石人類なのだろうか
ホモ=エレクトゥスは約200万年前から数十万年前まで長く生き続けた原人で、名前は「直立する人」を意味するラテン語である。ホモ=ハビリスの次の段階の人類にあたり、脳容積は約800〜1100ccに達し、現代人に近い体格をもっていた。アフリカで誕生した後、ユーラシア全域に広がった最初の人類であり、ジャワ原人・北京原人・ハイデルベルク人などはいずれもホモ=エレクトゥス系統に含まれる。アシューリアン文化を代表するハンドアックスや、火の使用など、人類の本格的な文化を築いた存在である。
ホモ=エレクトゥスはどのような身体的特徴をもつのか
ホモ=エレクトゥスの身長は約1メートル50〜1メートル80センチで、足が長く腕が相対的に短い、現代人に近いプロポーションをもつ。ケニアのトゥルカナ湖畔で発見された「トゥルカナ・ボーイ」(ナリオコトメ少年)は、約160万年前のほぼ完全な青年期骨格で、1メートル60センチ近い身長と長距離移動に適した身体構造をよく示している。脳容積は平均900ccほどで、個体差があるが、現代人の約7割に達する。顔面は平らで、眼窩上に太い眉骨が張り出し、後頭部に角張った膨らみがある点が原人の身体的特徴として挙げられる。
ホモ=エレクトゥスはどのような文化をもっていたのか
ホモ=エレクトゥスの文化を象徴するのが、アシューリアン文化のハンドアックス(握り斧)である。石核の両面を加工して左右対称の涙滴形に仕上げた万能石器で、叩く・切る・削る・掘るといった多様な作業に使えた。この技術は約170万年前のアフリカで成立し、ユーラシアにも広がって約30万年前まで使われた。ホモ=エレクトゥスはまた、計画的な狩猟・採集生活を行い、洞窟や開地で火を扱い、寒冷地では毛皮の衣服と火をもって冬を越した。北京原人の遺跡のように、同じ場所に集団が長期間滞在した痕跡も残されている。
ホモ=エレクトゥスはなぜアフリカを出たのか
ホモ=エレクトゥスが約180万年前に最初の出アフリカを果たした背景には、身体・技術・環境の三要素がある。長い足と長距離歩行に適した体は、広い範囲を移動できる持久力を備えていた。ハンドアックスと火を使う技術は、未知の環境でも食料調達と安全確保を可能にした。また更新世前期のアフリカとユーラシアの間には、気候変動によって乾燥地帯と草原が広がり、動物群と共に人類も新たな地域に進出できる条件が整っていた。こうした要素が重なり、人類は初めて大陸を越えた大規模な拡散を成し遂げた。
ホモ=エレクトゥスは人類史でどう位置づけられるのか
ホモ=エレクトゥスは、約200万年前から数万年前まで地球上に存在し続けた最も長命な人類であり、ジャワ島のソロ人までを含めれば約4〜5万年前まで生き残っていた可能性がある。アフリカにとどまった系統はやがて旧人(ネアンデルタール人の祖先)やホモ=サピエンスへと進化していき、現代人類の直接の祖先となる。世界各地に広がったホモ=エレクトゥスの後裔たちはそれぞれの地域で進化し、ジャワ原人・北京原人などの地域変種を残した。原人段階は、人類が地球規模の存在となる出発点として世界史の骨格を規定している。