第9章 国際政治の動向と課題

核拡散防止条約(NPT)

核拡散防止条約(NPT)

核拡散防止条約(NPT)とはどのような条約か

核拡散防止条約(NPT: Non-Proliferation Treaty)は、1968年に採択、1970年に発効した国際条約で、核兵器の拡散を防止することを主目的とする。現在、190か国以上が締約しており、国際的な核不拡散体制の中核をなす多国間条約である。条約名に「不拡散」とある通り、この条約は核廃絶を義務づけるものではなく、あくまで核保有国を5か国に限定し、それ以上の拡散を防ぐことを目的としている点に注意が必要である。

NPTはどのような構造になっているか

NPTは核兵器国(米・ロ・英・仏・中の5か国)と非核兵器国を明確に区別した二重構造を持つ。核兵器国は核兵器を保有することが認められているが、非核兵器国への核兵器の移転を禁じられ、核軍縮のための誠実な交渉を行うことを義務づけられる(第6条)。非核兵器国は核兵器の開発・取得を禁じられ、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる包括的保障措置協定を締結しなければならない。また、平和目的の原子力利用(原子力発電など)は認められており、これが「原子力の平和利用の権利」として締約国に保障されている。

NPT体制はどのような問題を抱えているか

NPT体制の最大の矛盾は、核保有5か国への核軍縮義務が事実上形骸化していることである。第6条は核軍縮への「誠実な交渉」を義務づけるが、具体的な期限や削減数は規定されていない。このため「五大国の核兵器を温存したまま他国の核保有を禁じる論理は説得力がない」という批判が非核保有国から繰り返されてきた。

NPTに参加しないイスラエル・インド・パキスタンがそれぞれ核兵器を保有しており、体制の外側に「実質的な核保有国」が存在する。北朝鮮は1993年・2003年に脱退を宣言(法的には脱退手続きの有効性について争いがある)し、核実験を繰り返している。イランはNPT加盟国でありながら核開発疑惑をもたれ、国際社会との緊張を生んだ。

NPT体制の近年の動向

1995年のNPT再検討・延長会議で条約の無期限延長が決定された。翌1996年には包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択されたが、核保有国の一部が批准せず、未発効のままである。NPTの5年ごとの再検討会議では、核保有国と非核保有国の間の対立が表面化し、2015年・2022年には最終文書の採択に失敗した。2017年の核兵器禁止条約の成立はNPT体制を補完しようとする動きとして捉えられるが、核保有国はこれを「NPTと相容れない」として否定している。

監修者 taisa68
最終更新日 2026-04-24