核兵器禁止条約
核兵器禁止条約とはどのような条約か
核兵器禁止条約(TPNW: Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)は、2017年7月に国連において122か国の賛成で採択され、2021年1月に発効した国際条約である。核兵器の開発・実験・製造・備蓄・使用・使用の威嚇をすべて禁止する、史上初の核兵器を全面禁止する多国間条約である。この条約の実現には「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が中心的な役割を果たし、ICANは2017年にノーベル平和賞を受賞した。
核兵器禁止条約はどのような内容を定めているか
条約は核兵器に関するあらゆる活動を禁止する。具体的には、開発・生産・実験・製造・取得・保有・貯蔵・移転・使用・使用の威嚇がすべて禁止される。さらに、他国が核兵器に関する禁止活動を行うことへの「支援・奨励・勧誘」も禁止される。これにより、「核の傘」のもとで核抑止に依存することも法的に問題となりうるという解釈が存在する。
被爆者・核実験被害者への支援も条約に明記されており、核兵器が「過去の兵器」ではなく、現在も被害者を生み続けている問題であることが強調されている。
なぜ核保有国と日本は署名しないのか
核兵器禁止条約には、核保有国(米・ロ・英・仏・中)はいずれも署名していない。また、アメリカの核の傘のもとにある日本・NATO加盟国・韓国・オーストラリアなども署名していない。これらの国々が署名しない主な理由は、核抑止論への依存である。「核兵器を完全に禁止すれば、核を持つ側が圧倒的に有利になり、かえって世界が不安定になる」という論理が背景にある。
日本政府は「唯一の戦争被爆国として核廃絶を目指しつつも、アメリカの核の傘に頼る安全保障政策を維持する」という立場を取っており、この矛盾への批判を被爆者団体や市民社会から受け続けている。
核兵器禁止条約はNPT体制とどう関係するか
核兵器禁止条約はNPT体制を補完する試みとして位置づけられている。NPTが「核不拡散」を中心とするのに対し、核兵器禁止条約は「核廃絶」を明確に打ち出している。しかし核保有国はこの条約を「NPTと相容れない」「核抑止の論理を損なう」として否定的な立場をとっており、条約の実効性には限界がある。条約の発効は法的な意義があるものの、核を持つ国に直接の義務を課せないため、象徴的な意味合いが強い段階にある。