インドネシア
インドネシアとはどのような国なのか
インドネシアは東南アジアに位置する世界最大の島嶼国家である。1万7000以上の島(有人島は約6000)から構成され、スマトラ島・ジャワ島・カリマンタン島(ボルネオ島のインドネシア領部分)・スラウェシ島・パプア島(ニューギニア島のインドネシア領部分)の5大島が主要島嶼である。国土面積は約191万平方キロメートルで世界第14位。人口は約2億7500万人(2023年)で世界第4位。国土が東西約5000キロメートルにわたって広がり、時差が3つ(UTC+7・+8・+9)ある。首都は現在ジャカルタ(ジャワ島)だが、新首都「ヌサンタラ」をカリマンタン島に建設中である。
インドネシアの地理的・地形的特徴はどうなっているのか
インドネシアは「火の環(環太平洋火山帯)」の上に位置するため、世界有数の火山・地震活動が活発な国である。活火山の数は約130で世界最多水準。スマトラ島のクラカタウ火山(1883年の大噴火で世界に衝撃を与えた)、ジャワ島のメラピ火山(現在も活発)などが有名である。2004年のスマトラ沖地震・津波(死者約22万人)、2018年のスラウェシ島地震・津波などの大災害を経験しており、防災は国家的課題である。国土の多くが熱帯雨林気候に属し、カリマンタン島・スマトラ島・パプア島の熱帯雨林はアマゾン・コンゴに次ぐ世界第3位の面積を誇る。この熱帯雨林はオランウータン・スマトラトラ・スマトラサイ・ジャワサイなど絶滅危惧種の生息地であるが、アブラヤシ(パーム油)農園への転換・違法伐採・土地開発により急速に減少している。
インドネシアの歴史的背景と文化的多様性はどうなっているのか
インドネシアは1万7000以上の島からなる多様な歴史と文化を持つ国家である。古代にはシュリーヴィジャヤ王国(7〜14世紀、スマトラ島)・マジャパヒト王国(13〜16世紀、ジャワ島)という強力な帝国が繁栄し、交易・農業・仏教・ヒンドゥー教文化が発達した。15〜16世紀からイスラム教が海上交易路を通じて広まり、現在のインドネシアは世界最多のイスラム教徒人口(約2億3000万人)を持つ国となった。16世紀からポルトガル・スペインが香辛料(クローブ・ナツメグ)を求めて来航し、17世紀にはオランダ東インド会社がジャワ島を中心に支配を確立した。約350年にわたるオランダ植民地支配(正式終了1949年)を経て、1945年に独立を宣言した。インドネシアは言語・民族・宗教の多様性を「Bhinneka Tunggal Ika(多様性の中の統一)」というスローガンのもとに統合している。公用語のインドネシア語(マレー語系)は共通語として全国で使われるが、日常生活ではジャワ語・スンダ語・バタク語など700以上の地方語が話されている。
インドネシアの経済と現代的役割はどうなっているのか
インドネシアは東南アジア最大の経済国であり、GDP規模は世界上位20カ国(G20)に入る新興経済国である。主要産業は天然資源の採掘・輸出(石炭・パーム油・銅・ニッケル・天然ガス)、農業(コメ・コーヒー・ゴム・スパイス)、製造業(繊維・電子機器・自動車部品)、観光業(バリ島・ボロブドゥール)である。ニッケルの埋蔵量は世界最大で、電気自動車のバッテリー材料として国際的需要が急増している。パーム油の生産量はマレーシアと並んで世界の9割以上を占め、食用油・化粧品・バイオ燃料の原料として世界中に輸出される。人口約2億7000万人の若い人口構造と急成長する中間層は、消費市場としての潜在力が大きい。ジャカルタの人口集中と首都機能の限界から、インドネシア政府はカリマンタン島に「ヌサンタラ」という新首都を建設中である。この首都移転計画はインドネシアの急速な発展と同時に、ジャカルタの地盤沈下・洪水・大気汚染という都市問題の深刻さを象徴している。
インドネシアと「世界の姿」単元との関連はどうなっているのか
インドネシアは「世界の姿」単元において重要な事例を多数提供する国である。第一に、島嶼国家(島国)の典型例として、1万7000以上の島からなる国家形成の在り方と、その地理的課題(島間の移動・交通・通信・国家統合)を学ぶ素材となる。第二に、赤道直下の熱帯雨林国として、地球規模の気候・植生分布を学ぶ際の重要な事例である。第三に、火山列島として環太平洋火山帯・プレート境界のダイナミクスを理解する事例である。第四に、経度的に東西5000キロに広がる国として、時差・経度の概念を学ぶ具体例となる。インドネシアのバリ島は南緯8度付近、パプア州の東端は東経141度付近に位置し、経度・緯度の概念を地図上で確認するのに適した国家である。東南アジアの中心部に位置するため、アジア州・オセアニア州の境界にも近く、地域区分の学習でも参照される重要な国家である。
インドネシアの地理的分散と国家統合の課題はどうなっているのか
インドネシアは1万7000以上の島にまたがる広大な国土を持つため、国家統合は常に政治的な最重要課題であった。独立時(1945年)には東インドネシア全域(現在のパプア・マルク諸島・東ティモールなど)の統合をめぐってオランダとの戦争(独立戦争1945〜49年)を戦った。パプア州(イリアンジャヤ)は1963年にインドネシア領となったが、独立志向のパプア人による独立運動(OPM:自由パプア運動)が今も続いている。アチェ州(スマトラ島最北端)では独立運動(GAM)が1976〜2005年に展開されたが、2005年のヘルシンキ平和協定で自治拡大を条件に武装解除された。東ティモール(ティモール島東部)は長年インドネシアの人権侵害を受け続けたのちに、1999年の独立住民投票を経て2002年に独立国となった。南スラウェシ・アンボン(マルク諸島)などでも断続的な分離独立の動きや宗教的暴力が発生してきた。インドネシア国軍(TNI)はこれらの統合維持において常に中心的役割を果たしてきたが、人権侵害問題も記録されている。インドネシア政府は地方分権化(1999年以降の「オトダ」政策)を進めており、各州・地区に大幅な権限が委譲されているが、国家統合と地方自治の均衡が引き続き課題となっている。
インドネシアの宗教と社会はどうなっているのか
インドネシアは世界最多のイスラム教徒人口(約2億3000万人)を持ちながら、「Pancasila(パンチャシラ、建国の五原則)」のもとイスラム国家ではなく世俗的民主主義国家としての立場を維持している。パンチャシラの第一原則は「唯一神への信仰」で特定宗教を指定せず、イスラム教・キリスト教・ヒンドゥー教・仏教・儒教の6宗教(後に儒教が追加)を公認宗教として認めている。バリ島(人口約430万人)はヒンドゥー教徒が人口の約83パーセントを占める「ヒンドゥー教の島」として知られ、世界的な観光地となっている。インドネシアのイスラム教は比較的穏健・寛容な「ナフダトゥル・ウラマー(NU)」「ムハマディヤ」という二大イスラム社会組織が主流で、伝統的にはスーフィズム的要素を含む慣習的イスラムが根付いている。しかし2000年代以降、中東(サウジアラビア)由来のサラフィー主義・ワッハーブ主義の影響で保守化・厳格化の傾向も見られる。ジャカルタ知事選(2017年)における宗教的少数派(中国系キリスト教徒)への攻撃は宗教的寛容の課題を浮き彫りにした。宗教と民主主義・世俗主義の関係はインドネシアの現代政治の最重要テーマの一つである。
インドネシアの気候変動対策と熱帯雨林の保全はどうなっているのか
インドネシアはアマゾン・コンゴに次ぐ世界第3位の熱帯雨林面積を持つ国だが、近年その急速な破壊が国際的問題となっている。スマトラ島・カリマンタン島(ボルネオ島)の熱帯雨林は、アブラヤシ農園(パーム油生産)・紙パルプ生産・石炭採掘などのために急速に伐採されてきた。1990〜2015年の間にインドネシアは世界で最も急速に森林を失った国の一つである。熱帯雨林の破壊は大量の二酸化炭素を排出するだけでなく、オランウータン・スマトラトラ・スマトラサイなど絶滅危惧種の生息地喪失をもたらしている。ピートランド(泥炭地)の開発・乾燥化・火災はインドネシアを温室効果ガスの世界的大排出国に押し上げており(世界第8位程度)、2015年の大規模森林火災は周辺国(シンガポール・マレーシア)にも深刻な大気汚染をもたらした。インドネシア政府はゼロ・ブルネイ宣言(2021年)・REDD+(森林減少・劣化からの排出削減)など森林保全の国際的取り組みに参加しているが、経済開発との両立という難問を抱えている。海面上昇はインドネシアの低地島嶼(特に首都ジャカルタ周辺)に深刻な影響をもたらしており、地盤沈下と組み合わさってジャカルタの一部は2100年までに水没するリスクがあると試算されている。これが新首都ヌサンタラ建設を推進する一因にもなっている。
インドネシアと「世界の姿」単元との関連はどうなっているのか
インドネシアは「世界の姿」単元において多くの重要な概念を学ぶ具体的事例を提供する国である。第一に、「島国(島嶼国)」の典型として、1万7000以上の島からなる国家の地理的特徴と課題(島間の移動・通信・行政・国家統合)を理解する素材となる。第二に、赤道直下の国として、赤道の位置・熱帯気候・熱帯雨林の分布を地図上で確認する素材である。インドネシアの国土は赤道をはさんで北緯6度〜南緯11度にまたがっており、赤道と緯線の概念を具体的な地図で確認できる。第三に、「環太平洋火山帯」の上に位置する国として、プレート境界・火山・地震の分布を学ぶ地理的事例となる。第四に、経度的に東経95度〜141度(幅46度)に広がる国として、経度・時差の概念を理解する具体例となる。インドネシア国内には西部・中部・東部の3つの時間帯(UTC+7・+8・+9)があり、経度と時差の関係を学ぶ実例を提供する。第五に、人口約2億7000万人・世界第4位の人口大国として、アジア州の人口分布を理解する上で重要な国家である。インドネシアとオーストラリア・パプアニューギニアとの位置関係はオセアニア州との境界理解にも役立つ。
インドネシアの観光産業とバリ島の役割はどうなっているのか
インドネシアはアジア有数の観光大国であり、バリ島はその最大の観光拠点である。バリ島は面積約5600平方キロメートルの小島だが、年間約600万人(コロナ禍前)の外国人観光客を受け入れる「神々の島」として世界的に知られる。バリ島の独自のヒンドゥー文化(寺院・舞踊・音楽・彫刻・儀式)は他のインドネシアの島々がイスラム化した後も保存され、「バリ・ヒンドゥー」として独自の進化を遂げた。棚田が美しいウブドの「文化的景観」はユネスコ世界文化遺産に登録されている。バリ島の観光依存経済は2002年・2005年のバリ爆弾テロ事件(オーストラリア人観光客多数が犠牲)やCOVID-19パンデミックによって深刻なダメージを受けており、観光一辺倒からの経済多角化が課題となっている。インドネシア全体の観光地としては、ジャワ島のボロブドゥール(仏教遺跡、世界最大の仏教建造物)・プランバナン(ヒンドゥー教寺院群)・コモド国立公園(コモドドラゴン)・ラジャ・アンパット諸島(世界最高の海洋生物多様性)なども国際的に知られる。観光産業はインドネシアの外貨収入・雇用・地域発展において重要な役割を果たしており、政府は「10の新しいバリ」計画で観光地の多角化を進めている。
インドネシアの新首都ヌサンタラと都市問題はどうなっているのか
インドネシア政府は2019年、現首都ジャカルタからカリマンタン島(ボルネオ島)東部への首都移転計画を発表し、新首都を「ヌサンタラ(nusantara、「島嶼国家」の意)」と命名した。首都移転の理由は複数ある。第一に、ジャカルタの深刻な地盤沈下問題で、北ジャカルタの一部では年間25〜30センチメートルの速度で地面が沈下しており、海面上昇と組み合わさって洪水リスクが急増している。第二に、ジャカルタへの過度な人口・機能集中の分散(ジャカルタ大都市圏の人口は約3400万人)。第三に、カリマンタン島への経済発展波及効果。第四に、ジャワ島(インドネシア人口の56パーセントが居住)への権力集中からの脱却による国家統合の強化。ヌサンタラは「森の中のスマートシティ」として、再生可能エネルギー・最新のデジタルインフラ・緑化による生態系保全を組み合わせた「未来都市」を目指している。2024年8月17日のインドネシア独立記念日式典の一部がヌサンタラで実施されたが、建設・移転は計画より遅れている。首都移転はジャカルタの環境問題・都市問題の深刻さを国際社会に示すとともに、急成長する新興国インドネシアの大胆な政策実行能力を象徴する出来事でもある。
インドネシアは一万七〇〇〇以上の島々からなる世界最大の島嶼国であり、人口は約二億七〇〇〇万人で世界第四位である。スマトラ島・ジャワ島・カリマンタン島・スラウェシ島・パプア島などの大きな島を含む赤道直下の熱帯の国であり、石油・天然ガス・石炭・ニッケルなどの天然資源に恵まれている。イスラム教徒の人口は世界最多であり、多様な民族・言語・文化が共存する多民族国家である。